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ラブ&モンスターズのこどものレビュー・感想・評価

ラブ&モンスターズ(2020年製作の映画)
5.0
筆舌に尽くし難いほど好きな映画が登場してしまった。要素がこれでもかというほど詰まっているので、より細分化されたジャンルにおいてはどこに突っ込んでいいのか分からないが、広く「冒険映画」と括れば、自分の冒険映画史上の最高傑作が本作だと断言できる。

先述したとおり、サブジャンル的にはどこに属しているのか分からなくなるほど要素がもりもりだ。終末世界、巨大生物、成長、犬、コメディ、シリアス、そしてラブ、デス、ロボット。
挙げればキリがないが、これだけ詰め込まれてるのに、詰め込んだ感が全くない。そればかりか、どれか要素を1つ失うだけでも、味わいが大きく損なわれる確信すらある。それほどまでに奇跡的なバランスを持って、本作独特の世界観は構築されている。
特に効いているなと思う部分は「ロボット」だ。
ユーモラスで愛嬌たっぷり、ロボットのメイビスの余命は「51分」。私は完全にここでヤられた。終末世界の、足をもがれた愉快なロボットが、活動を停止する寸前に主人公と出会い、対話ロボットとしての最期の務めを果たすのだ。こんなの、胸が熱くならないわけがない。
やっていることは所詮無機物との触れ合い、突き詰めれば『アイ・アム・レジェンド』で主人公が名前を付けたマネキンに話しかけているのと大差ないかもしれない。
でも全く違うのは、ジョエルは彼女との対話によって大いに癒されたということである。
旅の途中で生存者と出会い、彼らに励まされるというのはありがちな展開だが(本作にはそれもある)、ロボットとの対話が主人公に力を与えるというケースはなかなか珍しくて、とてもよかった。近未来的な世界観を本当によく利用している。というか、メイビス以外に近未来的なオブジェクトが登場した覚えがないので、彼女とのワンシーンを作りたかったがために時代設定を近未来をしたのなら、いまから飛行機にのって制作陣にハグしに行きたい。

基本的には生物が巨大化し人を襲うモンスターパニック的な映画にも関わらず、全面的にモンスターを悪者として描いていない点も素晴らしい。自然に対する愛がひしひしと伝わってくる。そこに限らず、この映画はとても「優しい」のだ。物語の随所で、「旅をする事」自体をしきりに肯定する。結果はどうであれ、大事なのはその過程で何を得たのか。きっとそれは一生ものの力になると。
何回か上手く失敗できれば、あとは大丈夫だと言ってくれる。
現状維持のバイアスは強い。ずっと同じでいたいかもしれない。でも、本当に自分はそれに納得しているのか?
引きこもって、ずっと同じで、果たしてそれは楽しいのか?
失敗上等で外に出てみよう。強く背中を押してくれる、元気が出る映画だ。
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