ずどこんちょ

ラブ&モンスターズのずどこんちょのレビュー・感想・評価

ラブ&モンスターズ(2020年製作の映画)
3.8
Netflix公開作品。
異常進化した生物たちが巨大怪物となり、人間を捕食するようになった荒廃した世界。食物連鎖の頂点から転落した人類は、おのおのがコロニーに隠れて7年の月日を過ごしていました。

主人公は武器を手にして戦ったことのない貧弱ヒーロー。
彼は7年前に離れ離れになった恋人に会いに行くため、愛だけを頼りに遠く離れた恋人のいるコロニーを目指して旅に出るのです。しかし、7年ぶりの外の世界は怪物だらけで戦闘の猛者でも生き残るのは至難の業でした。

怪物の描写が多種多様でユニークです。
ムカデやガマガエルが巨大化したシンプルな人食い怪物もいれば、神獣のような基本的に無害な怪物もいるし、夜に発光して美しく漂うだけのクラゲ怪物もいる。
旅の途中で出会った怪物退治の玄人二人によれば、目を見れば相手が害獣かどうか分かるそうで、ただ闇雲に人を襲うモンスターだらけの世界というわけでもないのが個性豊かで絶妙な世界観だなぁと感じます。
とはいえ、様々な生物がいるけど、人間にとってリスクが高いことから人間は地上の世界に怯えているのです。

この怪物退治のプロたちに、主人公のジョエルはこの世界で生き残る術を様々教わりました。
怪物の習性や、解毒作用のある植物、武器の扱い方に直感力の大切さ。やはり荒廃した世界で生き残るには知識とそれを使いこなすセンスが必要です。
旅の始まりは「愛」だけを頼りにしてほぼ丸裸な状態で旅だったジョエルでしたが、彼らとの出会いによって得た知識や技術が後々にも生かされ、怪物と立ち向かう勇気や強さを手に入れていきます。
その結果、ジョエルは地上への恐怖心に打ち勝ち、人類が怯えていた世界の実態を捉え始めるのです。

最初にコロニーから出た時のジョエルは、武器の扱いも不慣れで7年間調理係を担当していました。
怪物がコロニーに侵入した事件をきっかけに、自分だけが彼らの役に立っていないことを実感して居心地の悪さを感じていたのも旅の理由の一つでした。諦められ、侮蔑されたようないたたまれなさ。
そんなジョエルが、この旅を通じて知ったのは本当はコロニーの仲間たちは彼のことを平等に思い、大切に思っていたのだということ。
外の世界に逃げ出して初めて、居心地の悪さを感じていたのは自分に自信がなかっただけだったことを知るのです。
彼女への「愛」を胸に旅に出た男が、これまで自分自身が弱くて見えていなかった仲間の「愛」に気付くとは。

それだけでなく、途中でジョエルが出会った会話ロボットのメイビスは、別れの挨拶もできぬまま目の前で亡くなってしまった母との思わぬ再会も果たしてくれます。
残り15分の貴重な電力を使ってジョエルの願いを叶えてくれたメイビス。最期の言葉を伝えるジョエル。
またこれも「愛」に満ちて、とても切ないシーンです。

まったくこの映画は、優しい"ラブ"とハラハラする"モンスター"に溢れた映画でした。