『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『スナッチ』でタッグを組んできたジェイソン・ステイサムとガイ・リッチーが再び邂逅した話題作を鑑賞。
ガイ・リッチーは『アラジン』や『ジェントルメン』(未見)などの公開が続いており絶好調ぶりが窺える中で製作されており、ステイサムとの久々のコラボということもあって期待値が上がり過ぎていたかもしれない。
決して悪い映画じゃないし、ステイサムらしさもガイ・リッチーらしさもそれなりに出ているんだけど…どうにもテンポの悪さが気になってしまった。
時系列をバラバラに解体して真相を徐々に明らかにさせていくガイ・リッチーらしい技法は今回も生かされているのだけど、ステイサム演じる“H”の正体を巡ってサスペンス的な語り口で進行される中盤まではその技法がうまく機能していたと思う。
重厚で不穏なスコアも効果的で、殊更に盛り上げようとしないクールな佇まいも悪くない。
ただ、その正体と目的が判明して以降、グッとテンポが落ちてしまっていて、鈍重な足取りで敵側の背景を丁寧に描いてしまっていることで中盤までのスリリングでシリアスなムードが霧散してやや退屈に思えてしまったのがなんとも勿体ないと感じてしまった。
ビジランテモノでありケイパームービーでもあるのだけど、だからこそ敵側に入れ込む必要はないというか。
Hの話の通じない圧倒的に理不尽で傍若無人な無双ぶりだけを積み重ねてほしかった、というのが個人的な感想である。
ガイ・リッチー作品としてはこれまでにないほどエグみの効いたバイオレンスでダークな作りになっていて新鮮だし、『舐めてた相手が実は・・・』系の映画としてのカタルシスもしっかりあるのでこの手の映画好きには刺さる映画なのは間違いないのだけど。
でもやっぱり今年はその手のジャンル映画として『Mrノーバディ』という傑作があるのでこの映画の手堅さに少し物足りなさを感じてしまうわけである。
ガイ・リッチーはどうにも最近はスマート過ぎる気がするな。スタイリッシュであることに比重が置かれすぎているというか。
『ロック、ストック〜』という大傑作を作り上げているように、知性と蛮性が奇跡的に均衡を保ったようなバランス感覚を持ちうる人だと思うので今後も期待してしまうけど。
ただ、ステイサムの絶妙に似合わないダサいニット姿が堪能できるだけでも観る価値は十分にあると思います。