Anima48

キャッシュトラックのAnima48のレビュー・感想・評価

キャッシュトラック(2021年製作の映画)
3.7
飲み会の幹事を誰がやるかというだけで大抵その飲み会のカラーってわかる。“あいつが幹事をするなら、●●と○×が来て、2次会はどこそこに流れて・・とか。俳優もそんなところがあって、ジェイソンステイサムが出るなら、冷静なタフガイのアクションムービーだろうし、速い車を走らせてくれたら尚嬉しいという感じだ。ガイリッチーと組むと聞くと、ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズのような生意気で威勢のいい犯罪者がテンポよく進むイギリスの犯罪映画を未だに期待してしまう。なんだろう、昔夢中になってたバンドの活動再開第一弾のアルバムを聴くような具合だ。

オープニングは007のようで少し驚いてしまった。さすがにボーカルは入ってないし、女性のシルエットもない。重厚で影絵のようなダンテの新曲のような絵が映し出され低音のチェロの反復を使った音楽がタイトルロールから響く。そういう流れで、今回ステイサムは少し静かな気がする、珍しくボス役というのもあり、ものすごい怒りのせいでもあるけれど。仏頂面でそこにたたずんでいるだけでも良い。警備服を着たブロンソンのようでもあって、タフというのは彼の代名詞だけれど、静かな怒りというのも魅力の一つに加えてもいいのかもしれない。クリストファーランバートもそうだけれど少し宙を睨むような眼差しが独特で、ここは変わらぬ魅力というんだろうかな、存在感で勝負できるそんなタイプなのかもしれない。

出だしは期待の影の薄い人がとんでもない人だった系の変種だけれど、それは導入部にとどまっていて、その手の映画にありがちな爽快感はあまり無い。だってステイサムだから嘗められようがない。爪の隠し方がぎこちなく感じる、隠し切れない隠し味みたいなもので、ステイサムが現金を護る様子は警備というよりは、現金をエサにした待ち伏せのように見える。晴れた空、ヤシの木という道路の光景が多い、特に黄昏時や夕闇のなかのネオンがきれいだった。前半の襲撃とクライマックスの間はアクションというよりかは抑制のきいた犯罪サスペンスのようで、どうやら元ネタがあるとのこと。

フラッシュバックなのか時系列・視点とのいじりが面白くて、編集の巧みさというか面白さで、観てるこちらに着々と状況説明をしてくれる。らしさと言えばそれまでだけど、やっぱりいろいろあるアクション映画と比べてこの映画の特長の一つと言えるのではないかなと思う。最初のトラック襲撃を視点を変えて反復する(二重三重の意味合いを理解するために)箇所が後々の情報追加を新鮮に見せてくれるところが飽きさせずに話を追うことができた。ストーリーのテンポも復讐相手のグループとの接点がわかるまでは抑制が効いていて、視点がグループ側に移ると潜入任務を抱えたミッションインポッシブルのようだった。そこがフラッシュバックとうまく絡んでいたと思う。

後半の警備会社の車庫襲撃は大規模だけれど、基地の設備も相まって迫力があった。押し入り、強奪、脱出、逃亡の流れが視点切り替えと解説?とをうまく組み合わさっていて面白い。防弾チョッキやヘルメットのおかげでまるで生気のあるターミネーターを相手にしているようで、比較的参加人数の割には、ボリュームがある銃撃戦の時間が充実してたような気がする。車庫襲撃の間の小目標が次々に変わっていくので、アクションシーンが進む間はストーリーって止まって中だるみすることがあるけれど、見てて飽きなかった。やるせ無さ、重さを感じさせるラストだけど。

ここしばらくは違ったスタイルを選択していたガイリッチー、次はどんな感じになるんだろう、楽しみにしたい。
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