シズヲ

女は女であるのシズヲのレビュー・感想・評価

女は女である(1961年製作の映画)
3.5
ヌーヴェルヴァーグの代表的監督、ジャン・リュック・ゴダールの三作目の長編映画。今日中に妊娠したい女性と彼女を取り巻く二人の男があれやこれやと変な漫才を繰り広げる。アンナ・カリーナはやっぱり可愛らしいし、彼女が身にまとう真っ赤なドレスなどの色彩感覚はとても好き(夫役のジャン=クロード・ブリアリが対照的な青いジャケットを着ているのも良い)。

なんだか不思議な映画で、さながらミュージカルのような雰囲気を漂わせておきながら登場人物は特に歌わないという外し方がやたら印象的。ミシェル・ルグランが手掛ける華やかな音楽が全編に渡って用いられるものの、突然音がぶつ切りになったり肝心の歌唱シーンで伴奏が途絶えたりなど常に型破り。シュールな場面編集やコメディ的な掛け合い、更にはメタフィクション的なシーンも見受けられたりと、なんだか終始掴み所がなくて面食らう。ジャンヌ・モローがチョイ役で出てきたり「早く帰って『勝手にしやがれ』が見たい」というセリフが出てきたりするのはフフってなる。

奇妙な描写にいちいち惑わされるものの、話そのものはよくよく振り返れば三角関係を軸にした些細な悶着に過ぎない。男女のあれこれについての見解も述べているように見えるけど、まぁ要するに子供=家庭の将来に対する温度差を抱えた夫婦の痴話喧嘩的なものだと思う。コミカルな雰囲気も相俟って、ある意味ラブコメに片足突っ込んでる気もしないでもない。そういう意味で物語自体は他愛のないものだけど、諸々の演出のおかげで何だかんだで憎めない味がある。
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