2016年、プレス向けの会見。緊張した固い表情、少し震えて見える4人がステージに上がる。
「YGからデビューするグループ、BLACKPINKです!」
拍手も歓声もなく、一斉に叩かれるキーボード。次のカットはその3年後、2019年。アジアでアメリカでヨーロッパで、大歓声に迎えられる4人…。
そんなふうに始まる“BLACKPINK:Light Up the Sky”の監督キャロライン・スーは丁寧な演出手腕であくまで綺麗にしかし残酷に、YGエンターテインメントの、韓国芸能界のタレント育成システムとセルアウトのストラクチャーを浮き彫りにしていく。
「吸収力ある若い年齢のうちに、徹底的に歌とダンスを叩き込みます。デビューして10年間、勝負出来るように」
宮崎駿『風立ちぬ』の名台詞…「人生において創作のピークは10年間が限界」…を裏付けるように、自身もパフォーマーだったプロデューサーが堂々とインタビューに答える。それを自覚しているメンバーたちが切なくもあり、美しくもある。LISAが断言する。
「次の世代に取って代わられても構わない。ただ私たちのことを忘れないでいてくれればいいな」
入念に計画されたピークとしての2019年はコーチェラ出演を含めたワールド・ツアーという望外の大成功だった。2020年をギリギリ回避出来た、間に合ったことも今となれば運命のように思え、今作をよりドラマティックにしている。
「コーチェラには様々な人が集まる、BLACKPINKも同じ」
タイ、バンコクから13歳で最愛の両親と離れ独りでソウルに来て、ニュージーランドとオーストラリアにそれぞれ移住経験があり英語を話せたJENNIE、ROSEの存在に助けられながら成長し思いっきり自己表現を行なってきたことをこれまでの1時間で十二分にわかっている観客にとって、このLISAのメッセージは深く心に響く。
刹那でも、いつか終わるとしても。だからこそ画面に映るとてつもないスケールの成功、ツアー・ファイナルの涙が儚く尊い。