タコの生態を追うドキュメンタリーと見せかけて、１匹のタコの生態を追い続けるうちにタコに特別な想いを抱き、タコに執着しタコに振り回され、タコに癒されタコに救われ、タコと瞬間心重ねられたと信じたドキュメンタリー作家に迫るドキュメンタリー🐙
撮り溜めた素材をどう料理するのか、という監督が描いた思考の道筋自体のアイディアもさることながら、それを実際に流れで見せるにあたっての巧さに脱帽。
編集というよりも脚色に近くて、ドキュメンタリー作品として映像そのものが持つ美しさと驚きに、視点ひとつで付されたストーリーとの調和でぐいぐい引き込まれた。
例えばタコが天敵のサメに追われるシーン。
助けたいけど自然の理に手を出せず、カメラを回し続ける監督。
音やナレーションでタコにめいっぱい感情移入させつつ、自然の緊迫感を極限まで活かしてその攻防を魅せる。
カットの繋ぎ方も、そこらのサメ映画とは比べ物にならないナチュラルさ。
遠ざかってはまた近づき、本当に被写体との間に心の距離と、確かな信頼関係が生まれているとしか思えない画の数々。
タコが見せる表情の豊かさとその生き方に心酔した監督が、共犯関係となって潜り続けた先に何を見るのかーー
