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オクトパスの神秘: 海の賢者は語るのKentaCのレビュー・感想・評価

3.8
人生に疲れた映像作家の中年男性・クレイグが、南アフリカの「ケルプの森」と呼ばれる海中の群生地帯で、とあるタコと出会い交流を深めた約1年間を記録したドキュメンタリー映画。

毎日海に潜りタコのことを「彼女」と呼び恋焦がれる、妻子持ちのおじさんの映画…と書くと非常に怪しい感じですが、
タコと打ち解け徐々に交流を重ね関係を深めていく中でタコの知られざる生態が明らかになっていく様子は非常に見応えがあり、
自然や生命の尊さと素晴らしさが映像面での美しさと共に存分に伝わってくる内容になっていました。

上述のようにクレイグ氏のタコへの思い(もはや情念)が強すぎる部分があり、タコの行動への意味付けを行っているのもその彼なので、客観的なドキュメンタリーとは言い難い部分もありますが、それでもタコとのコミュニケーションや距離感の変化を見ていると、ちゃんと双方向の関係性だったんだろうなと感じさせられます。

生命の神秘に触れ、包まれながら、じっくり心を休め、再び生きる意味を取り戻していった中年男性の再生の物語、として捉えることもできる良い映画でした。
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