わたふぁ

オクトパスの神秘: 海の賢者は語るのわたふぁのレビュー・感想・評価

4.5
一人の海洋生物学者が一年間、毎日毎日同じポイントで素潜りして、一匹のマダコの生涯を撮影し続けたドキュメンタリー。

広くて深い海の中で「一匹の小さな同じ生物に何度も会う」という発想がシンプルに驚きだった。

目印となる地形的な特徴はあるのだろうけど、岩も藻も、そしてタコも一括りにして「どれも同じ」に見えている側の人間には衝撃的。
人間と同じようにタコにもお気に入りのエリアがあり、見たい景色を選んで生きる「暮らし」があるのだと知った。

彼女の生息エリア(お気に入りの岩)に定点カメラがぽつんと設置されて、恐々と一通り触ってチェックして、置いたオジさんのことを覚えていて、数日後、恐々と、でも自ら近づいて優しく吸盤を張り付けて握手のようなことをした時にはヒャーと声が出た。

海洋生物学者のオジさんの研究熱心さにも負けない「タコがもつ好奇心」ってものに触れられて感激した。

最後、干物のように変わり果てた姿に号泣してしまったが、弱肉強食のこの世界。
美しい景色を見せてくれた名もなきタコのあなたに感謝する。