真世紀

今宵、奇跡の起きる温泉で。の真世紀のレビュー・感想・評価

4.2
OPフェス自分的四日目、二本目は竹洞哲也監督「今宵、奇跡が起きる温泉で。」。温泉で恋人と睦まじく時を過ごす明日香(きみと歩実)は、社会人となって両親をこの宿に連れてきた際の想い出、そして突然の死別後、再訪したこの地で死者と再会する手段があると聞かされての出来事を語り出す。

まず、ヒロインのきみと歩実さんが色々とかわいい。両親(モリマサ、佐倉萌)との温泉旅行、ガイドブックが古かったり、ちょっと空回りしつつ孝行する様や箸が無くてもご飯は食えると茶碗にかぶりついておどける父親をすぐ真似したり。やはり、恋人と死別したが再会できたという仲居さん(新垣智江)。彼女から死者と再会する力を得るために神社の境内で二人してドラゴンボールのフュージョンでも始めるのか、と言いたくなる色んなポーズをとらされる様なども。この二人の身長差も絵面的に楽しいんだけど、まさか、その長身ぶりに突然のプロレスネタがぶっ込まれるとは思わなんだ。ケンドー帯広って。カシンと帯広さやかを足して二で割ったような名前が出てくる始末。「北都プロレス所属になるんかい!」とつっこみたくなりました。

また、恋人と十年前に死別した男の役で細川佳央さんが中盤から登場。ピンク映画何本か観てくと馴染みの顔になる男優さんが増えていくけどそのお一人(それ以前の「殺人ワークショップ」とかも観てるけど)、いい役でありましたね。

本作、死者の描き方もユニーク。なにぶん、ピンク映画なもので恋人と再会するや否や身体を重ねるわけでありますが、ホラー者的にはこの辺、「牡丹灯籠」以来の伝統で幽霊と情を交わすと寿命を削られる、精気を吸われる、或いは連れていかれるかと少し不安になる次第であります。ところがそんなことなく。

きみと歩実さんと両親の再会になると、当然、こちらは普通に親子の交流が始まり、まるで映画「異人たちとの夏」の趣。地震で亡くなる間際の両親が食事時で、準備したそばを食べ損ねたからと三人でカップのそばを食べ出すシーンなどは笑えて泣けました。いわゆるジェントルゴーストの系譜なのでした。

小松公典、脚本作。しかし、毎度思うけど、基本的にピンク映画の人、特に弱者に向ける視線は優しいよなぁ。

今回は舞台挨拶無し回だったけど、細川さんが出口にいらしてお客さんに挨拶。写真も撮らせてもらって映画フェス気分が高まりましたわ。スコアはそこも加味して。
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