Joey

映画 太陽の子のJoeyのレビュー・感想・評価

映画 太陽の子(2021年製作の映画)
4.0
太平洋戦争で日本は多くを失った。
列強に対抗し得る日本を創るために薩長が掲げていた尊王攘夷は、この時まで受け継げられていた。錦の御旗を掲げ、倒幕のために多くの若者を犠牲にし、その御旗は若者達を特攻隊員として送り出す時まで掲げられていた。その先にあったのは2発の原子力爆弾。「青天を衝け」で慶喜は、尊王攘夷を呪いの言葉と言い表した。呪いは続いていた。

京都への原爆投下は本当に計画されていたらしい。ただ、あの時、2発の原子爆弾しか製造されていなかったようで、3発目の製造までには時間を要した。ロシアの侵攻によって全面降伏を決めることになるけど、それが無ければ、京都の街並みは消失していただろう。

オリンピックが東京で開催された。ドラマ「いだてん」で田畑政治が言っていた。メダルを取る事で人々に笑顔が溢れる、それがオリンピックだって。ソフトボールや野球で米国を打ち破り、バスケットボールでは遥か遠くにいた米国の背中が見えるようになった。確かにオリンピックは国と国とが戦う代理戦争という要素はあるかもしれない。でも彼等は自分達の限界に挑んでいるだけで、国の為に犠牲になっている訳ではない。誰かのためではなく、自分のために戦っている。

国はそんな人達を後押しするために存在すべきものだ。もはや国という概念は捨てて、国なんて所属クラブ程度の概念で良いと思う。沢山の難民を日本クラブが受け入れ、ロシアの選手だって日本クラブに編入すれば良いではないか。それが新しい国の在り方なんじゃないだろうか。松蔭や斉彬や龍馬や円四郎だったら、そう言っただろう。監督の黒崎博は「青天を衝け」の演出にも参加していて、幕末から続く大河ドラマのような気がしてしまった。

テレビ版とは異なり、かなり映画っぽく(?)なってしまったけど、柳楽優弥の存在感に変わりはない。彼がおにぎりを頬張るだけで涙が溢れてくる。あんなデカイおにぎりって、どんな塩加減なんだろう? と、どうでも良いことが気になったりして、なんだか笑顔で泣いていたような気がする。素晴らしい役者達が色々な思いを与えてくれた。
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