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B/Bの8637のレビュー・感想・評価

B/B(2020年製作の映画)
4.3
先に言っておくが、私のオールタイムベストは「ウィーアーリトルゾンビーズ」である。

...そんな私が田辺・弁慶映画祭のオンライン無料上映を見逃した1年前から観たくて仕方がなかった映画。フォロワーさんもそうでない人も、こぞって「ウィーアーリトルゾンビーズ」他にも庵野秀明やゴダールの名前を出して傑作だと言ってるものだから、見逃すわけにはいかなかった。という訳で青少年条例をちょっと破ってテアトル新宿のレイトショーまで足を運んだ。結果としては、5.1chが実現した劇場で観られて良かった。

もうだめだ凄すぎる... 十二重人格としてキャラクターを沢山登場させてあのテンポ感で会話させただけで勝ちだろ。
そして確信犯なくらい「ウィーアーリトルゾンビーズ」そのものであった。カット割り、埋もれる程のセリフ量、シークエンス、制服の少女、ゲーム、反抗思想、両親死んでる状態、少女の鼻歌、夕日、皆死んじまえ...

士朗からしたら紗凪はイクコのような、魅力的かつミステリアスな、幼心のファムファタール的存在だった。
しかしそんな彼女がこの映画では主人公である、という確固たる事実。どこか深奥で開かれる賢人会議で彼女自身の葛藤が浮かび上がる。

「IT」の弟くんすら彷彿とさせる過去のビジュアルなど、古今東西からのオマージュがありながらも本分は"今"の自主映画である。
もしかしたら僕の好きなあの映画にもあったのだろう、自主映画感を醸し出すような熱量が。
今作も、"サイコーマート"という場所の表記があるにもかかわらず「LAWSON」が見えていたりと、制作側の闘魂の証が残っている。

倉嶋かれんさんの人格使い分けの演技と"ただ一人"のヒロインとしての魅力に77分間狂わされた。キャラが濃くてくどくなる予感がしていた12人のアンサンブルも上手い具合。

単館映画の劇場上映の良いところの一つに、今初めて知って魅力的に感じたキャラクターもといその俳優と、舞台挨拶でノータイムで生でお目にかかれる所がある。どうしても山下敦弘監督×中濱宏介監督の大阪芸大トークが全体を占めてしまったが、言葉の意味を理解しきって5.1chの話をするお二人のトークは心地よく聞き飽きない。
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