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シカゴ7裁判のヨウのレビュー・感想・評価

シカゴ7裁判(2020年製作の映画)
4.4
大統領選挙を前にしてベトナム戦争反対のデモが勃発。ニクソン政権が誕生してまもなくデモの主犯格7名が起訴され、法廷にて凄まじい争いを繰り広げる。一貫して正義を主張し無罪を求める被告側。断固として有罪を突きつけようとする判事側。双方の対立は激化するが、偏見に満ちた理不尽な裁断に翻弄され7人は窮地に追い込まれる。冷酷で非人道的な判事のジャッジには情状酌量の欠片もみられない。あまりにも惨い仕打ちに憎悪が頂点に達し、座っている椅子を映し出される判事の顔に向かってぶん投げたくなった。言論の自由を抑圧する悪の権威を前にしてどこまでもやり切れない思いに駆られる。観ている者の心をぐしゃぐしゃにするようなこうした経緯があるからこそ、ラストシーンの破壊力が生まれるのだと思う。散々に苦しめられ、感情を爆発させる7人の男たち。辛酸を舐めた先に導き出した集大成のカタチには見事に唸らされた。法廷に響き渡る鎮魂歌と歓喜の声を耳にし、感動することこの上なかった。政治背景に与することにより腐敗を極めた法制度の実態を炙り出し、民主主義の本質を知らしめてくれた雄たちにこれ以上ない称賛を与えたい。あたかも自分が裁きの場に立たされているような感覚に陥る、非常に上手く作り込まれた法廷映画である。アカデミー賞最有力候補と言われているが、これは絶対多部門を総なめにするだろう。加速度的に面白さが増長し、終盤に向かうにつれてボルテージはMAXに達する。確固たるメッセージ性で訴えかけながらここまでその世界観に入り浸らせてくれる映画も珍しい。想像を優に超える傑作であることに驚かされた。これは2020年新作TOP10入り確定かな。平等と自由とは何たるかを顕示し、政治的陰謀が介入する司法界へ死亡証書を差し出す。歴史に名を残すシカゴ・セブンたちが織り成す衝撃的な裁判の模様はどこをとっても素晴らしいとしか言いようがない。今年のベストを決める前にぜひとも観て欲しい一本だ。
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