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シカゴ7裁判のRenのレビュー・感想・評価

シカゴ7裁判(2020年製作の映画)
4.0
本当に面白かった。マスコミにシカゴ・セブンと名付けられた反ベトナム戦争派の若者たちを中心に描いた裁判劇。法廷ものの傑作だと思う。

史実に基づく法廷劇、政治裁判・反戦運動などキーワードを掲げると仰々しくもありますが、予想よりはるかに観やすく、エンタメとして観ても楽しめる開けた映画だった。

まず面白いのが、シカゴ・セブンの面々が全く同じ思想を持っているわけではないという点。反戦という目的は一致しているものの、平和的解決を謳う男もいればやられたらやり返せ精神の男もいる、なのに彼等を一括りにして起訴した大陪審。集団に名前を付けて括る危険性への問題提起も漂わせていた。

一つの言葉が、見方を変えると別の意味を持つ、というラストの展開も面白かった。そのために、あの忌まわしき判事が序盤「君は私と同じ名前だ」と言うギャグを差し込んでおくの上手すぎる。
法廷ものというジャンルの属性と『ソーシャル・ネットワーク』のアーロン・ソーキンによる脚本が相まって、とにかく色々な人が喋りまくる。最初、あまりにたくさんのキャラクターが出てきて台詞を言いまくるので離脱しかけたが、このテンポの良さと編集の小気味良さがどんどん心地よくなっていくのだから流石。

実話なのにラストが読めなくなってくる展開を見せるのも最高。想定した通りのカタルシスを映像で見せないのにスタンディングオベーションしてしまいたくなる爽快感に帰着させる脚本、お見事だった。

『万引き家族』然り『パラサイト 半地下の家族』然り、自国の闇を間口を広げて見せてくれることも映画が担うべき一端だと感じる。まさに今、観るべき映画。

12年前に一途だけど情け無い男子を演じたジョセフ・ゴードン=レヴィット、今作では大人の魅力を十二分に発揮しており、素敵な俳優だなあとしみじみしてしまった。今後も推していきたい。
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