10円様

シカゴ7裁判の10円様のレビュー・感想・評価

シカゴ7裁判(2020年製作の映画)
3.7
大好きな法廷もの。アーロンソーキンはちゃんと映画撮れるじゃん!な一作です。
やっぱり法廷ものって面白いです。言葉と言葉の応酬によって論理戦や心理戦を展開させる様は下手なアクションを観てるより全然緊張感があります。そしてその言葉の主となってくるのが弁護士や検事ってわけで、今作もエディレッドメインやサシャバロンコーエン等演技派、個性派、曲者役者が多々出演している中で、ウィリアムクンスラー弁護士を演じたマークライランスが一番光っていました。

(調べるとこのクンスラー弁護士はキング牧師やマルコムX、レニーブルースの弁護も行っているそうです)

なんでも映画化の話は遡る事2004年からあり、監督はスピルバーグが行う予定だったらしいですね。そこから組合のストで頓挫し、現在になってやっと映画化が実現したようです。16年も経っているのだから当然のように当初予定されていたキャスティングとは全く別物なのですが、エディやコーエンはとても1969年代の顔をしていて、まるで彼らを待っていたかのような運命的なものを感じました。

製作中も予算がなくなる等、何かと難航気味だったようですが、完成度の高さは素晴らしいです。ベトナム反戦下の大規模なデモシーンが無かったのが残念ですが、所々実際の映像を入れてくれたのが良かったですね。低予算でもかなりの出来栄えになったのは、演出と役者が良かったからなんでしょう。

ベトナム反戦下の時代ってのは線引きが難しいと思っています。思想のために立ち上がる人もいれば、個人のプライドの戦いを持つ人もいます。表面上の体裁で動いている人もいれば、物見遊山で流されている人もいます。もちろんノンポリもいます。日本じゃあまり馴染みのない事かもしれませんが安田講堂事件を考えると分かりやすいかもしれませんね。
民主化を謳っているもののとても狂っている時代、正義と正義のぶつかり合いなのか、アイデンティティのぶつかり合いなのか分からなくなっている時代。自分があの時代に生きていたら、どんな生き方をしていたかなあ〜って考えさせられる作品でした。

ラストのエディレッドメインのシーンはやばかった…
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