しゅんすけ

シカゴ7裁判のしゅんすけのレビュー・感想・評価

シカゴ7裁判(2020年製作の映画)
4.6
「シカゴ7裁判」

 「ソーシャル・ネットワーク」「スティーブ・ジョブズ」(ダニー・ボイル監督版)などの脚本で知られる会話劇映画の達人、アーロン・ソーキンの「モリーズ・ゲーム」に続く監督2作目。

 1968年、ベトナム戦争中に民主党大会に戦争反対のデモ行進をしようとした活動家7人。警察との衝突で暴動に発展した責任を問われ、共謀罪などの罪で起訴され裁判が開始になるが、明らかに彼らの言い分は聞かない不利なかたちで裁判は行われ・・・・という話。

 大統領選、BLM 、最高裁判事の件などかなりタイムリーな時期に配信公開されましたが、僕個人はあんまり「露骨なトランプ批判」「ゴリゴリのバイデン推し」みたいな感じはなくて安心しました。警官の過剰な暴力に対する批判がきっちり描かれ、特にサシャ・バロン・コーエン、エディ・レッドメインあたりの描写に顕著なように決して活動家たちを完璧な人物として描かないあたりは良かったです。

 編集が「ゾンビランド」や監督の前作「モリーズ・ゲーム」の人だからかテンポがよく、130分があっという間に感じました。同時の社会背景などわからない部分があっても、爽やかに観れる一作だと思います。これは人によっては「物足りない」と感じる部分かもしれませんが、あんまり泣かせに走らない感じも良かったです。

 役者陣は、みんないいんですが、まあ、おいしいとこを持ってくのは若手検察役のジョセフ・ゴードン=レヴィットと弁護士役のマーク・ライランスですよね。ジョセフは配信作品中心とはいえ、カムバックしたのが嬉しいです。あと、フランク・ランジェラの「老○」としか言い様のない判事役も見事でした。複数の俳優のアカデミー賞候補が期待されてるようですが、誰がノミネートされてもおかしくない気がします。

 本作を観て感じたのは、一番危険なのは活動の中心の人そのものではなく、その周りにいる盲目的にその人を信じてる人たちなんだなということです。本作に描かれている暴動にしても取り巻きの奴等の暴走がきっかけになっていたし、BLMにしても、互いの立場の過激な信徒が暴走してしまい、事態が大きくなっている気がするので、過剰な政治信条に対する信仰は危険だなと感じました。

 めちゃくちゃ面白かったです。NETFLIX配信に加え、日本では一部劇場でやってるらしいですが、もっと全国規模でやってほしい快作でした。