垂直落下式サミング

シャドウ・イン・クラウドの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

シャドウ・イン・クラウド(2020年製作の映画)
3.0
空軍士官ステゴロ・クロエ、拳で撃墜。
輸送機のボールターレットに入れられた主人公が、機体に取りついた空の怪物グレムリンの存在をすぐさま機長に報告するも、男たちは信じずに彼女の素性や目的を疑い出して、まともに取り合わない。そのまま日本軍の零戦と交戦状態になって本領発揮。そこらへんまではよかった。
やたら下品な男たちの軽口。女の正体とは?鞄の中身はなんじゃろな?あっちから零戦の援軍だ!機体の右翼にグレムリンが!わかったから、ひとまず落ち着いてくれよ。
これを、緊張の持続した見せ場のつるべ落ちと言っていいのか?ハナシがもたなくなってきたから、強引に別の話題に切り替える二流バラエティー芸人のような忙しなさだと思いましたけども…。
俺にもわかるくらい脚本が乱雑。いろんな問題が平行してイッキに起こるから整理がつかなくなって、主人公の長い自分語りで物語に急ブレーキをかけなければならなくなる瞬間がやって来る。怪物襲撃、日本軍との戦闘、守らなければいけない鞄、こんなのゴチャるんだから、まずは一個ずつ処理してけばいいのに。
短い映画なのに、航空機という限定された空間をうまくみせるアクションのアイデアに乏しくて残念。主役が身の上話くっ喋ってるあいだは、日本軍も怪物も襲ってこない物語の都合による停戦協定で飽きてしまう。
映像的にも、長回し長セリフでワンショットの顔面アップをなんも工夫せずに見せてるから、余計につまらなく感じてしまった。そのあとで銃座から機内への場面転換となるが、それが劇的な効果を生むわけもなく。金のかかってる映画じゃないんだろうけど、僕のみたいものは見せてくれなかった。
主人公の素性が明かされてからは、どんなことがあっても絶対に殺されないであろう登場人物が決定してしまうから、まったくハラハラしない。過度に重いものを背負わせ過ぎ。あと、トロくさいから緊急事態に抱き合ったりは最小限にしてほしい。
主人公以外の登場人物は、前半は声だけだから演技もクソもないんだけど、最初はやな感じだった通信士が、やられそうになりながら人間味のあること言うので、なんか好きになってしまった。まあ、そんくらい。