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イエローキャットのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

イエローキャット(2020年製作の映画)
4.0
【アラン・ドロンになりたい男は映画館を作りたい】
※第21回東京フィルメックスで邦題『イエローキャット』として上映決定!

さて、カザフスタン映画である。カザフスタン映画といえば、ダルジャン・オミルバエフ監督を筆頭に2000年代以降少しずつ力をつけてきている。今回紹介する『YELLOW CAT』のAdilkhan Yerzhanovは死んだ父の借金を返済すべく東奔西走する『The Gentle Indifference of the World』でカンヌ国際映画祭ある視点部門に選出されたことのある監督だ。『YELLOW CAT』を観ると、あと10年以内に三大映画祭のコンペティション部門に選出されるであろうと思う程にユニークな監督でありました。

男が店に入る。ここで仕事をしたいようだ。店員は、「何ができる?」と訊くと、「『サムライ』のアラン・ドロンのモノマネができます。」と語り、いきなり帽子をクイッとズラす真似をし始める。モノマネにしてはあまりにも下手で絶句するのだが、彼は採用される。しかし、すぐに警察に捕まってしまう。本作は、エドワード・ホッパーのドライなタッチで物語り、まるで舞台劇のように奇妙な人間配置が施されている。マフィアとの銃撃戦も、トランポリンを使って、朽ちたコンテナの上から射撃をするマフィアに対して、トランポリンに戻って行く挙動を見越してカウンターを入れる中々観る事のできないアクションを楽しむ事ができる。そして、必死にアラン・ドロン愛を伝えようとモノマネをすれども、「お前はバカだ」とあしらわれ、映画館を作ろうにも中々うまくいかない様子は滑稽でありながらも、その広大な自然に立ち込めるぎこちなさは、カザフスタン社会の停滞を揶揄しているのではと思わせられる。

よく愛で勝利を勝ち取ろうとする映画はたくさんあるのだが、このシュールな愛の物語は観る者を虜にするものがありました。
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