デパルマ

サマーフィルムにのってのデパルマのレビュー・感想・評価

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)
3.5
ドおもろいし大好きだった。伊藤万理華の小学生みたく落ち着きのない動作や表情がめちゃくちゃ魅力的だし、何より映画制作にムダに前のめりなハダシにぴったりだった。本作で示される映画の未来はミニシアターエイド、コロナ、ファスト映画を経た2021年には超絶タイムリーでかなり辛辣。人類はTikTokしか見なくなってしまうのか。
十三人の刺客、MIFUME、勝新、座頭市物語、雷蔵、長谷川一夫、円月殺法、瞼の母とか出てくるワードが最高すぎて時代劇オタクでもないのに盛り上がった。侍二人して釣りするシーン座頭市物語すぎて爆笑。どんだけ好きなんだよ。ハダシと絶対友達になれるわ。サブキャラ一人一人が背景にならないでそれぞれ葛藤しててよく話したら良いヤツで空気の読めないヤツで、みんなキラキラしてて眩しかった。ハダシの親友、ビード版とブルーハワイもほんとに最高のキャラしてるし演じる河合優実と祷キララのファンになった。二人とも素敵やん。

ただラストがご都合的だし唐突だしエモ過ぎるので、あんまり好きじゃない。僕だったらこうする…。ラストシークエンス、ハダシたちの映画が上映されている。ハダシは映画を観ながら脳内で敵役のダディボーイに自己を投影する。すると画面のダディはハダシに入れ替わる。ハダシと凛太郎は間合いを取りながら互いを見つめ合う。まるで世界に二人しかいないみたいだ。そこに言葉はない。しかし観客は二人の愛を確信する。刀を抜けば最後。もう友達のままではいられない。それでも映画は、映画監督は、この物語に決着をつけねばならないのだ。瞬間、凛太郎は間合いを詰める。ハダシもすかさず地面を蹴る。刀を抜く。崩れたのは凛太郎。消え入るような声でたった一言「お前に斬られたかった」。この台詞は「あなたでなければ撮らない」に通ずるこの映画最大の愛の言葉。ハダシは当初、キラキラ恋愛映画を毛嫌いしていたが、「座頭市物語」もまた一種のラブストーリーなのだと気付いた。ハダシの作った映画は屋上で「好きだー!」なんて叫ばない。TikTokのように10秒で消費されて消えていくのは御免だ。ハダシが「座頭市物語」を観て感動したように、観る人がこれから何十年、何百年でも楽しめるような映画を作りたい。この映画も同じだ。それこそハダシの作りたい映画なのだ。エンドロールを見つめるはだしは泣いている。隣に凛太郎はいない。思い出すのは楽しかった日々。しかし不思議と悲しくはない。むしろ清々しいくらいだ。ハダシは決意する。わたしは映画監督になる。それを全部映像と表情だけで見せてくれたら全俺が泣いていた…。演劇的な身体性とエモーション持ってくるより、そのほうが“映画的”だと思う。わがままな感想でsorry。
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