わしかずまの中の人

サマーフィルムにのってのわしかずまの中の人のレビュー・感想・評価

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)
4.0
【あらすじ】
時代劇映画に夢中のハダシ。しかし、所属する映画部では青春恋愛映画ばかり制作していることを不満に思っている。そんな時、ハダシのイメージする武士役そのままの少年・凛太郎と出会う。 ハダシは幼なじみのビート板、ブルーハワイと個性豊かな仲間たちを集め、彼の出演する映画を制作し、文化祭での上映をしようとする。
しかし、凛太郎はタイムトラベルで現代にやって来た未来人だと知ってしまい・・・。

【事前情報】
松本壮史監督初長編作品。
3人が屋上で叫んでいる印象的なポスターは、コロナ禍の影響により撮影が中断した翌日に撮影。
そこでやけくそになっている3人の姿を写したそう。
ちなみに、 ビート板は運動が苦手で小学校のプールの授業にビート板を持参していたことからついたあだ名。
ブルーハワイはかき氷を食べる時、いつもブルーハワイのシロップをかけることからついたあだ名だそうです。



👇以下、ネタバレ含みます👇
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【所感】
芋臭さ全開の青春ムービー。
わざとらしいほどエモさ満載で、時にはちょっとさむく感じてしまう演出もあるけど、それがまた良い。
そのわざとらしいエモさも、ラストのこれまたわざとらしい演出に向かっていくのだと思うと、もう一度観たくなってしまう作品です☺️

ハダシにビート板にブルーハワイと、何とも個性的でいかにも青春といった感じのあだ名で呼び合っている3人。
この3人と相対するキャラクターの花鈴。
映画部って、こんなリア充たくさんいるんだ😅
花鈴率いるリア充軍団がつくるラブコメと、ハダシ率いる寄せ集めスタッフがつくる時代劇。
どちらも高校の文化祭レベルの作品で、微笑ましくなるのだけれども、多感な時期にはこれくらいが良いのかもね。
そして、花鈴のピンチに敵に塩を送るスタイルのハダシ。
個人的には、このシーンはポイント高め。

凛太郎がタイムスリップしてきた理由も凄いけど、納得できる。
確かにタイムマシンがあったら、巨匠の無名時代の作品を観るために過去に戻るかも。
未来には映画が無いと言っていたけど、それでも凛太郎はハダシの存在を知り、ハダシの映画を好きになった。
恐らくハダシの映画は資料として残っていて、その記録をたどって凛太郎がタイムスリップしたのだろう。
いつかそんな時代がくるかもと思うと、寂しい気もする。

女子高生が時代劇にハマるというのはなかなか珍しいけど、理由は納得できる。
初めて観た時代劇が座頭市なら、確かにハマるかも。
しかも劇場で観たならなおさら。
「映画ってスクリーンを通して、過去と未来をつないでくれると思う。」
わしも同じ思いを持っているのだけれども、10代でその感情が芽生えるのは、やはり将来の巨匠の片鱗が見える。
賛否ありそうなラストシーンも含め、不器用ながらもハダシの大物感が表現されている描写は今作に欠かせないと思います。

【まとめ】
上手く言語化できないけど、不思議な魅力のある作品。
言うならば、令和版時をかける少女といったところか。
映画はいつか無くなるかもしれないけど、映画好きの心は永遠。
これを観たら映画を撮りたくなる、ただのエモい青春映画で終わらない傑作です😌