マヒロ

オールドのマヒロのレビュー・感想・評価

オールド(2021年製作の映画)
3.5
海辺のリゾートホテルにバカンスにやってきた家族は、ホテルの支配人にオススメされプライベートビーチに向かうが、謎の力が働きそこから出られなくなったばかりか、あり得ない速度で身体が年老いていることに気付く……というお話。

「老い」は人間に等しく訪れる身体の変化ではあるけど、それが本人の意思とは無関係に、普通では無いスピードでやってくるという設定は普通に恐ろしい。「肉体の変化」という描写に昔から生理的嫌悪感を覚える節があって、シャマランがいかにそこを描いてゾクゾクさせてくれるのか……と思ってたら、想像と違う何やら妙な味わいのものが出てきた。この感じこそがシャマラン節とも言えるが。

1日で寿命を迎えてしまうビーチは人生の縮図のような場になっていて、博物館の学芸員であるお母さんは過去を見る人、保険屋のお父さんは未来を見る人として描かれており、それが役に立つこともあるが、短い人生の中で一番大事なのは過去でも未来でもなく「今」を生きることだ……というメッセージなのかなと思った。メタファー……というほど比喩に富んでいるわけではなく、セリフ等々ストレートすぎてそのまんまな気はするが、そこはご愛嬌。

シャマランの映画をいくつか観てきて気づいたある共通点があって、まず映画の最初に観客の心を掴む奇妙な出来事が起こるんだけど、その出来事に対して絶対何か現実的な答えが用意してある。ミステリーやスリラー映画は過程を楽しませて真相は有耶無耶、ということも多いが、意地でも理由づけをしようとするところがシャマランっぽさなのかも。ただ、掴みありきで話を作っているので、その理由付けが歪な形になってしまい、明確なオチがあるのになんか腑に落ちない感じが拭えない。
劇中で巻き起こることも、そこだけ切り取って見ると結構ゾッとするような場面のはずが、ギャグみたいなノリで撮っているので怖がっていいのか笑っていいのか分からない妙な気持ちにさせられる。狙ってやってるのか天然なのか分からないが、他の映画ではなかなか味わえない絶妙さなのは間違いない。

「シャマランらしさ」を味わうのだとすれば間違いなく純度100%シャマラン映画ではあるんだけど、期待していた「老い」の恐怖は殆ど描かれておらず、題材に対するフェティシズムが足りない感じがした。例えばクローネンバーグとかだったらもっと肉体的・精神的におぞましいものすごい画を見せてくれたんだろうなと思うと、監督色にべっとり塗り固められた今作はちょっと勿体無さはあった。
『ヘレディタリー』のアレックス・ウルフ、『ジョジョ・ラビット』のトーマシン・マッケンジー、『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』のエリザ・スカンレンと最近ノってる若手たちの好演も印象的だったが、驚いたのがお母さん役のヴィッキー・クリープス。他に出てる作品は『ファントム・スレッド』しか観たことがなくて、あちらの若妻役のイメージが強かったので、今作でしっかり二児の母の雰囲気を醸し出しているのが地味にすごいなと思った。何だったら、終わりまで観たことない役者さんだと思ってたくらい役柄に馴染んでいた。

間違いなく変な映画ではあるが、その微妙なツボのズラシ方が何となくクセになるような、珍味みたいな一作。

(2021.153)[13]