あでゆ

オールドのあでゆのレビュー・感想・評価

オールド(2021年製作の映画)
4.9
◆Story
バカンスを過ごすため美しいビーチを訪れ、それぞれに楽しいひと時を過ごすキャパ一家。そのうち息子のトレントの姿が見えなくなり、捜してみると彼は6歳の子供から青年へと成長した姿で現れ、11歳の娘マドックスも大人の女性に変貌していた。不可解な事態に困惑する一家は、それぞれが急速に年老いていることに気付く。しかしビーチから逃げようとすると意識を失なってしまい、彼らは謎めいた空間から脱出できなくなる。

◆Infomation
『シックス・センス』『スプリット』などのM・ナイト・シャマラン監督によるサバイバルスリラー。謎めいたビーチから脱出すべく奮闘する一家の父を『モーターサイクル・ダイアリーズ』などのガエル・ガルシア・ベルナルが演じ、『ファントム・スレッド』などのヴィッキー・クリープス、『ライ麦畑で出会ったら』などのアレックス・ウルフのほか、トーマシン・マッケンジー、エリザ・スカンレンらが共演する。

◆Review
2021年ベストといっても過言ではない一作。というかおそらくそうなるだろう。
本作はこれまでのシャマラン作品同様、一応のミステリー作品という体をとってはいるものの、その実オチの部分はレッドフリングで、あまり重要視されていない。
全体を通して描かれるトーンは、どちらかといえば「歳を取る」というのはどういうことか、という思考実験的な方向に寄せられている。
おそらくシャマラン自身も歳をとったことで様々な点で価値観が変化していったのだろう。
そして、本作が素晴らしい点は必ずしも「歳をとる」ことはマイナスなことではないというふうに描かれているところだと思う。そういった深い話を見せつつ、笑っていいのかわからないシリアスギャグ、B級映画のようなナンセンススプラッター、変なテンポの掛け合いなど、シャマランらしい要素をこれでもかというほどに、オールスター的に散りばめている。

本作の最も名作たらしめる要素の一つに、これまでのシャマラン作品同様、シャマラン自身が出演しているということが挙げられるだろう。
いや、最初は嫌な予感がしたのだ。
というのも、これまでの彼自身の出演は良くも悪くも自己主張が強く、作品のバランスを崩して変に目立っていることが多かった。
今作でも上映冒頭にシャマラン自身が登場し、わざわざ観客に向かって挨拶をするので、首を傾げてしまったのだが、ここから本作の仕掛けは始まっていた。
知らない人向けにも顔見せをしつつ、その上でビーチという舞台で撮影を行う彼の顔は、まさに監督そのものであり、観客が見る時間がコントロールされた悲劇は映画というメディアそのものである。

外側では治験にはじまる考えると都合の悪いことを見過ごしながら映画を楽しむ観客を描き、内側ではどんな環境だとしてもそこでの人生が素敵だと思えるなら他人には関係なく、可哀想と感じられるいわれはないというニ軸を描いた傑作。
あでゆ

あでゆ