ブルームーン男爵

ヘルムート・ニュートンと12人の女たちのブルームーン男爵のレビュー・感想・評価

3.7
スリリングな写真で話題を集めたドイツ出身の巨匠カメラマンのヘルムート・ニュートンの生誕100年を記念したドキュメンタリー。エロティックな写真は「ポルノまがい」「女性蔑視」とも批判された。しかし、著名ファッション誌「VOGUE」の写真を手掛け、あの編集者のアナ・ウィンターも一目を置いた。そして出演しているモデルたちから出てくる出てくるヘルムートへの賛辞。彼の写真は、被写体の人格をも映しだし、本質をあぶりだす。彼の写真は女性蔑視どころか女性に力を与えていたのだ。

こんなスリリングな写真を撮るんだから、パンク野郎か芸術家肌の気難しい完璧主義者かと思いきや、ドキュメンタリーに映るヘルムートはとても愉快で愛想が良い愛妻家。彼の父親は企業経営者で裕福な家だったそうで、育ちの良さが人柄に出ている。彼のジェントルマンな対応にモデルは信頼を寄せたのだろう。そして彼は批判のことも承知で、そのうえで刺激的な写真をてがけ続けた。そこには彼なりの信念があったことがドキュメンタリーから伺い知れる。

そんな彼も最期はあっけなく自動車事故で亡くなってしまった。映画ラストで映し出される、奥さんが撮影したヘルムートとの最期の写真がなんとも素敵だった。彼の撮った写真はいつまでも人々の記憶に残るだろう。