こころとからだ

パリの調香師 しあわせの香りを探してのこころとからだのレビュー・感想・評価

3.9
普通に興味深く、おもしろかった。配役がとても合っていて、無理な展開もなく、違和感なく、イライラせず落ち着いて見れる。それだけで十分すばらしい。

ヒューマンドラマであり、いろいろな苦悩やうまくいかないことなど、共感できる部分も多い。またフランスの美しかったり、リアルだったりする地方の光景なども見られるのもいい。

素人のおじさんが、元天才調香師に才能をみそめられて、香水づくりをアシスト、さらには自分でも香水をつくって大ヒットして成り上がる、みたいな話ではない。

また、Diorやジャドールといった言葉は劇中に出てくるが、あくまで一瞬の設定である。服装専門学校に行く人が期待するようなファッション映画でも調香師の伝記でもない。香水の瓶すらひとつも出てこない。

あくまでも、うまくいかない人生の再生を目指す主人公の設定のひとつが香りの専門家であるというだけで、足りない2人が出会うことで進む成長の物語である。雑にいえば、男女凸凹コンビによるバディ作品ともいえよう。

調香師とあるが、調香師とは劇中でもほとんど使われないし、本人も名乗ることはない。これから見る人は、パッケージや予告映像のきらびやかなイメージに騙されないように、ご注意を。

ラスト3分くらいが怒涛に進むのはいいのだが、唐突すぎて少し置いて行かれた感があったのはマイナス。せっかくここまで丁寧に描いてきたのに。Diorをどうしても入れて、アイキャッチシーンを無理矢理にでもつくりたかったように思えてしまう。

Diorやジャドールという名称は出さないほうが、映画の完成度からするとよかったと思う。出す意味とは。