幽斎

スカイライン −逆襲−の幽斎のレビュー・感想・評価

スカイライン −逆襲−(2020年製作の映画)
3.8
恒例の「スカイライン」シリーズ時系列
2010年 4.2 SKYLINE「征服」まさかのお馬鹿黙示録の幕が上がる
2017年 4.0 Beyond Skyline「奪還」まさかの人間とエイリアンのタイマン勝負
2020年 3.8 Skylin3s「逆襲」まさかの宇宙での下克上バトル
2023年 仮題 Skyline4 まさかのロサンゼルス帰還、ウィズエイリアン社会を描く

VFXの新興勢力「Hydraulx」創始者GregとColinのBrothers Strauseが誰も作らなかった「AVP2」を製作して、ハリウッドからフルボッコされた事から端を発した「スカイライン」シリーズ。Paul Newmanが登場すると連想した方は、相当の車好きか御年配とお見受けする"笑"。第1作「征服」SFソリッドシチュエーションスリラーと言う新ジャンルを開拓、硬派なファンの熱い支持を集めた。第2作「奪還」はエイリアンと肉弾戦を繰り広げる新たなアクション映画の扉を開いた。詳しくは「スカイライン征服」「スカイライン奪還」のレビューもご覧下さい。

「スカイライン」シリーズはStrause兄弟が経営するハリウッドのVFX製作会社「Hydraulx」が製作してきた。ハリウッド・メジャーでVFX工房を所有するのはソニー・ピクチャーズ1社のみ。「スターウォーズ」以降、特殊視覚効果は外注が当たり前で、多くの工房が乱立した。その中でHydraulxはソフトウエア開発に依る低価格を実現し、2000年代から2010年代まで数多くの大作を下支えした。中でも「2012」「アバタ―」は、この会社無しでは作れなかった。しかし、2018年以降風向きが大きく変わる。

現在の視覚効果はSF映画に限らず、例えば女優の皺を消したり、男優の身長を伸ばしたり、ロケで行ってないベネチアのホテルから海を眺める、車窓の風景は全て合成等非常に多岐に渡る。現在では多くの編集作業をアジア圏のスタジオに外注する仕組みが主流に為った。此の事は結果的に技術流失に繋がりDonald Trump大統領就任以降、ハリウッドに回帰する動きも有るが、時既に遅し感は有る。資本に余裕の有るソニー以外、メジャーでもロケに掛かる負担をカバー出来ず、殆どのシーンを合成で済ます作品も増えた。Hydraulx社と言えば実写合成デジタル・コンポジットだが、彼らが得意とするジャンルも、中国やインドなど多くの新興勢力が参入、業績も悪化の一途を辿る。もう「スカイライン」を一社提供で製作する資金力は無い。

Liam O'Donnell監督は元はHydraulx社のクリエーターで「征服」では脚本、「奪還」では監督と脚本を担当したが、究極の選択を迫られる。1つはシリーズ最大の功労者Strause兄弟の意志を受け継いでシリーズを続行するのか?。看板を畳んで清く撤退するか?、それとも権利を売って一儲けするか?。幸いな事に前作の配給会社バーティカルエンターテインメントが、一肌脱ぐ形でアメリカ資本を諦め、アイスランドのM45 Productionsと英国のGifflar Films Limitedが新たな運営母体と為り、イギリス主導で制作する事が決まる。更にスペインとリトアニアの配給会社が参加する事で、前作並みの製作費が確保できた。VFXは今まで通りHydraulx、Strause兄弟は栄枯盛衰を肌で感じただろう。

全権監督Liam O'Donnellは、大幅なコスト削減を受けて続投が濃厚だったFrank GrilloとIko Uwaisをカット、とは言えシリーズ継続と言う意味でYayan Ruhianだけは残す苦渋の選択。特にGrilloは、このシリーズが好きで参加しただけに本人も「残念だった、また機会が有れば是非」とコメントを寄せた位愛着が有った。監督は功労者である彼の恩に報いる為、続編で復帰させる前提で製作。その熱意は本編をご覧頂ければ判る。前作は世界遺産でロケを敢行したが、本作はスタジオ撮影がメインで、少ない予算で知恵を絞る監督は、新たな風を入れる事で巻き返しを図る。Lindsey Morganは続投、其処に「ジョン・ウィック」で敵役ヴィゴの腹心キリルを演じたDaniel Bernhardtが新たに参戦。他にもJonathan Howard、Rhona Mitra御大James Cosmoと英国系俳優が華を添え、アクション映画としてのクオリティを維持する努力は感じられた。

「スカイライン」ですが、よく考えると、プロット的にはヤクザ映画に近いモノが有る。最初は拳銃をブッ放して家に乗り込んできた「征服」。其処へ頼りになる兄貴と舎弟を連れて反撃に出た「奪還」。敵のアジトに乗り込んで大暴れする「逆襲」。Vシネマ健在をアピールする「日本統一」と何ら変わらない設定に笑いが止まらない。「インデペンデンス・デイ」の様な時代遅れの作品は、チョッとの反撃で喜んでる。「トランスフォーマー」なんて散々暴れといて「後は宜しく」ですからね。「アベンジャーズ」に至っては壊した街を復興するのに。どれだけ時間とお金が掛かるのか、それでヒーロー面されてもチャンチャンら可笑しい訳ですよ。何か間違った事言ってます?"笑"。

Strause兄弟が事実上外れた事で(プロデューサーとしては参加)、シリーズの熱量がダウンした事は否めないが、それまでのSF映画の常識を打ち破った。その割りに知名度の低いシリーズですが、中国ウイルスで洋画の新作が枯渇する中、劇場公開をしてくれたハピネットにも感謝したい。日頃はジャケットや邦題が詐欺紛いだと散々言ってきたが、今日は封印しよう"笑"。ローズが「キャプテン・マーベル」状態だと、この先のシリーズ存続も危ういが、アメリカ民主党政権が好きそうな「スター・トレック」対話重視何て、クソの役にも立たないと言わんばかりの宇宙への殴り込み。これでイイんです、これが良いんです。

「SKYLINE」地平線、連山が空を画する輪郭、日産の名車。アメリカ英語で言えば、故郷から遠く離れた土地と言う意味も有る。

オーソドックスなスペース・オペラと化した第3弾、Frank Grilloの再登板を私も心待ちにしてる。
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