LALA

仕事と日(塩尻たよこと塩谷の谷間で)のLALAのレビュー・感想・評価

3.8
ウィーン国際映画祭にて

思ったこと、覚えておきたいことを並べておく。

"におい"と"懐かしさ"。

夜明け、湿ったアスファルト、雨に濡れた畑、朝の畑、昼の畑、夕方の畑、鳥のいる部屋、車の中、山の中、風呂場、台所、おばあちゃんの家の冷蔵庫…のにおい

美しい映像と音
鳥・虫・カエルの鳴き声、風に鳴らされた稲・草・山の声、雨、川、水、車、トラック、バス、畑に貼られたビニールの音…
全ての情報が私に"におい"を感じさせた。

上映後の登壇で監督も音に拘ったと言及してたけど、Intermissionも含めて、綺麗だった。

"懐かしさ"。
地元、日本を離れて暮らしてるからっていうのも確かにある。
でもそれ以上に、子どもでなくなることにつれて、
聞こえなくなった音、見えなくなったもの、感じることを忘れてしまったにおいを大画面大音量で体験しているからなのか。

監督の一人、Anders Edströmの義理の母である塩尻たよこさんの周辺のお話。

たよこさんの大学の話。進学したかったが親に反対され、断念。昔から両親や近所の大人の喜ぶ顔を見るのが好きだった。だから反対を押し切ってまで自分のやりたいことを目指す気にはなれなかった。兄は東京へ。当時の「女は大学には行かなくていい。着物が縫えて、料理ができればいい。」という考え。何度も言っていた、たよこさんの「悔しい」という言葉が印象に残る。

2台のカメラとマイク。ドキュメンタリー映画なのか?と思わされる。同じように感じた人は少なくないらしく、監督へ質問している人がいた。
「かなりリアルに近いドキュメンタリーの様に感じた。しかし分類はフィクション。その点どの様な撮り方だったのか。」
C. W. Winter監督が躊躇いながら答えたのは
「フィクション的な会話にドキュメンタリー的なリアクションをする…といったようにドキュメンタリーとフィクションは共存しうる。見ているあなたがそれほどリアルに感じてくれたなら嬉しい。」

また、登場人物のほとんどが実際に村に住む住人であることについて
「俳優としてuntrainedな人々と作品を作るのが好きだ。一つ大変だったことといえば、名前。皆、自身や相手のフィクションの名前を忘れがちで、撮影中に名前への反応が遅れることだ」
と話して、会場を笑わせた。

8時間、480分で私はとても美しい村の一年間を見た。
私はその1年間をあと何回生きられるのか。あと何回、美しい季節の移り変わりを見れるのか。
帰り道、風に揺れる木々の音がいつもよりはっきり聞こえた。