クリーム

無聲 The Silent Forestのクリームのレビュー・感想・評価

無聲 The Silent Forest(2020年製作の映画)
3.9
『むせい』読めませんでした。主人公の生徒達同様、鑑賞者も怒りの矛先を何処に向ければ良いのか解らない。作り方が、ホラーのシリーズものの様でした。ホラーじゃないけど…。
最近観た作品の中では、断トツの胸糞映画。ご注意を…。
台湾の聾唖学校で実際に起きた性的暴行事件をモチーフにした社会派ドラマ。
台湾南部の聾唖学校に転校してきたチャン。同級生のベイベイとすぐに打ち解け新生活を始めるが、ある日、チャンはベイベイがスクールバスで複数の男子生徒からレイプされている現場を目撃する。が、ベイベイはその後も彼等と何事もなかったかのように遊んでいる。チャンはワン先生に真実を打ち明け、ベイベイを助けてほしいと懇願するのだった。




ネタバレ↓





結局、主犯のユングアンも幼少期から美術教師による性的虐待に悩まされていて、だから、他の弱者を虐待した。ユングアンの周辺だけでなく、学校全体に蔓延していた。被害総数は分かっているだけで128件。
ユングアンが性的虐待を受けた時は子供で、遊びだとかゲームだとか思い込み耐えていたのかも知れない。また、彼は『あんなに憎い教師で、憎まなければならない相手なのに会ったら嬉しかった。自分から教師を求めた。自分は変態だ』と自殺未遂をしていました。かなり精神的に追い込まれていた。ユングアンのした事は、けして許されない。が、主悪の根元の美術教師が罪に問われた様子がないのには怒りしか感じない。校長は懲戒免職になったが、他の見て見ない振りの教師とかも処罰すべき。
だけど、この問題はそれだけではない。
ベイベイが『外の世界で孤独になる方が怖い』と言っていた。嫌だけど、そこだけ我慢すれば、後は、健常者ばかりの中にいるより、良いと…。小さい時からの学校で、友達もいる。その場所を奪わないで欲しいと懇願する。問題が起きても学校に居たいから生徒達は、我慢すると言うのだ。痛い程の思いが伝わって来た。
平静に戻った通学バスの中、後部座席にはチェンが無理やり暴行させられた男子がいて、眠っている男子生徒の顔を制服で覆おうとして終わります。まるで次のユングアンだと言わんばかりに…。
健聴者に悪く誤解され、聴こえない事を馬鹿にされ、攻撃を受けて来たと感じている聾唖者達。この映画は、聾唖学校で、起きた恐ろしい事件だけでなく、居場所もなく、助けを求める事も出来ない聾唖の人達の置かれている現状をどう思うのかと訴えています。強烈な映画ですが、インパクトがあるからこそ、皆が観て考える。そう言う意味では、価値のある作品かも知れない。
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