KATO

川っぺりムコリッタのKATOのレビュー・感想・評価

川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)
4.0
待望の荻上監督の最新作。相変わらずのぴかぴかのごはんが美味しそうで、本当に“生活”を切り取るのが上手。

自分のせいで誰かを傷つけてしまったり、自分の価値とは? なんて壮大なことを考えてしまったり。そして、笑えなくなったり、笑っていいのか不安になったり……誰にでもあるような、いつでも降りかかってきそうなつらさをしっかりと描かれていた。

笑っていいのかなぁと思う瞬間がある。私、こんなに楽しくていいのかなぁと不安になるときもある。誰かを傷つけたことがあるという自覚があって、温かいごはんを食べることにすら罪悪感を抱いていたときだ。でも、いろんな時間を重ねて、いろんな人やモノに出会って、人間なんだからそれでいいんだよなと思えるようになった。

美味しいごはんに、なんか分からないけど面白いこと。日常の幸せって、そんな小さいことをたくさん集めて、今日も乗り切ったとホッとする。そんな日常とか、たまに思い出すツラかったこととか、そんなものがたくさん散りばめられていた作品で、観てよかったなぁとシンプルに思った。

ぴかぴかのごはんと、イカの塩辛、シンプルな味噌汁と、夏野菜。それだけで満たされる時間は過ごせる。そんな時間の積み重ねが、生活なんだと思う。そして、そんな生活があるから、たまに降りかかる影と対峙できるんだと思う。

不思議な爽快感と、ゆったりとした空気がよかった。
KATO

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