シズヲ

脱出のシズヲのレビュー・感想・評価

脱出(1944年製作の映画)
3.6
往年の名女優ローレン・バコール、当時19歳新人!!?煙草を咥えた佇まいと気丈で知的な振る舞いがとにかく風格に溢れているので、これで銀幕初デビュー新人だったらしいのがビビる。ホークスに鍛えられた賜物か、ハンフリー・ボガードと並び立つ姿もめちゃめちゃクールに決まってて凄い。

本作の中核を成すボギーとバコールのアンサンブルはホークスらしい軽妙な掛け合いも相俟って渋い味わいに満ちている。個人的に好きな名バイプレイヤーことウォルター・ブレナンも憎めない三枚目として本作のユーモアを担っているのが嬉しい。あと秘密警察の太ったリーダー格、絶妙に嫌らしいオーラがあって地味に好き。

ナチス・ドイツの影響下に置かれたフランスを舞台としているものの政治色や社会性は薄目で、ボギーらのキャラもあって専らハードボイルドな娯楽映画の趣が強い。終生に渡って娯楽作家のスタイルを貫いたホークスのそういうスタイルはやっぱり好き。人々が行き交う港や賑わいに満ちた酒場などの生々しい息遣いに溢れたシーンは印象的で、ピアノの旋律と共に度々挟まれる歌の演出にもグッと来る。

深夜の隠密航行のシークエンスなど要所要所の緊張感も良かったけど、ナチス絡みの舞台背景に対して序盤からロマンス色で引っ張りすぎているせいか映画の着地点が微妙に見えづらいところもあった。ホークスの演出や燻銀のムードもあって手堅く纏まってはいるけど、それゆえに突き抜けて面白かったという印象でもない。それでもボギーとバコールの格好良さには引き込まれる。
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