2010年代後半から「リメンバー・ミー」や「ソウルフル・ワールド」など、スピリチュアルで普遍的なドラマが増えてきた時期のピクサー作品。
1950年代、イタリアの海沿いの町を舞台に、海に住むシーモンスターと人間の少女の触れ合いを描く。海洋生物と人間という設定は、アニメ作品で多く取り入れられており、日本のジブリにも同種の作品が存在するが、この「あの夏のルカ」は舞台設定が「ニュー・シネマ・パラダイス」と似ており、アニメ映画でありながら何処か古い名作映画を観ているような感触がある。
錆びたベスパや長い歴史を持つであろう駅舎など、画面を彩る美術が総じて味わい深く、メキシコを舞台にした「リメンバー・ミー」同様、ピクサーの新しい方向性を示しているようだ。
シー・モンスターは太陽の光を浴びると人間の姿に変色するという設定が、3DCGアニメの手法とマッチしていて、スリリングさと美しさを醸し出している。特段目新しさがあるわけでは無いが、さすがピクサーと思わせる良作だ。