ゆうき

ある職場/些細なこだわりのゆうきのレビュー・感想・評価

ある職場/些細なこだわり(2020年製作の映画)
2.7
実際に生じたセクハラ事件を監督が取材して製作された映画だそうですが、辛口に評すると、良く出来た『企業のコンプライアンス教材』といった感じの作品に仕上がってしまっている…

上映後のQ&Aである方が『この映画を観て色々と考えなければいけないと思った』という主旨の発言をされていましたが、本作品を観てそのような感想が出てくるということは、セクハラに関して日本では理解が全然進んでいないことの現れだと思ってしまった(質問した方を非難しているわけではありませんゴメンナサイ)。

本作品のストーリーは、あるホテル運営会社で生じたセクハラ騒動が、その会社だけでなく、社会的な注目を浴びてしまうまでに発展する、一連の事件を描いている。
メインの舞台設定は、セクハラ騒動が起こってから2ヶ月後の会社の慰安旅行?で訪れた江ノ島の近くの保養所。ここを利用することになる、セクハラ被害者を含めた職場の同僚などのメンバーが、事件の顛末や感想について語り出し(被害者がそこに居るにも関わらず)、それがきっかけで非常に険悪な状況に陥り…
そればかりか、そのまた数か月後の慰安旅行で一同が集まり…狭い保養所の中でお互いの気持ちをぶつけ合う…という展開で物語は進む。

その際、監督も仰っていたが、劇中のメンバーのキャラクター・役割分担が明確に与えられていて、例えばある男性は『ちょっと触られたくらいでワーキャー騒いで、会社全体を騒動に巻き込むな!』とか、一方である女性(管理職?)は『私も若い頃はそんなことはいくらでもあって、それでも我慢して仕事を続けてきたんだよ。』みたいな事を言う人物まで現れる。更には『僕は君の事を思って、ネットにこの事件の情報を流したんだよ!』ということまで言い出すヤバイ奴も登場。まぁ、現実にそういう奴らは未だにいるんでしょうけど、これはちょっとステレオタイプが過ぎて、むしろ映画としては微笑ましい(ただ、現実に居たら殴りたい)。なので、鑑賞者である自分がその場にいたら、そんな奴らは諭したり断罪するよりも、むしろ宥めてしまいそうだ。つまり、令和のこの時代に何を言ってるんだ、どうしようも無い奴だなオマエ…という感じ。

これが昭和や平成の中頃までに上映されていれば評価は全然異なるのだろうが、今の時代の30代男性(自分)には全くもってアホらしいな、と思う。そう、登場人物のみんながアホなのが気になってどうしようもなかった。

有り体に言ってしまえば、アホがアホの議論を観ても、現実問題のセクハラは何ともならんでしょうよ…。この映画のモチーフならば、コーポレート・ガバナンスや組織のオーソライズに視点を置いた方がまだ良かったのに、とまで思ってしまった。

これと似た構成の密室劇では『12人の怒れる男』があまりにも有名だが、これは主人公が人格者であり、かつ時代背景がハマる映画なので、誰しもが没入できるのだ。一方で、この映画は…

ということで、かなり厳し目な批評になってしまったが、ハラスメントの問題を取り上げた、この映画の製作に携わった方々の真摯な姿勢には敬意を表したい。

また、念のため最後にはっきり言っておくが、セクハラするやつはクソヤローだ。
ゆうき

ゆうき