ゆめちん

皮膚を売った男のゆめちんのレビュー・感想・評価

皮膚を売った男(2020年製作の映画)
3.0
皮膚を売った男
 
アカデミー賞国際長編映画にノミネートされた作品で、公開されるのを楽しみにしていました。
 
難民のサムは、偶然出会った現代アートの巨匠から意外なオファーを持ちかけられる。それは大金と自由を手に入れる代わりに、背中にタトゥーを施し、彼自身がアート作品になるというものだった。
 
全般にわたりラブロマンス的な要素を匂わせながら、難民問題や人権問題、さらには現代アート界への風刺など、ユーモアも交えながら独特な切り口で描かれ、そのバランスが何とも絶妙。
アート作品になったサムが、各国を自由に行き来し、豪華なホテルで暮らし、キャビアを食べ、肌も入念に手入れされ、元恋人のアビールとも再会するが、本作は本当の自由とは何かを問いかけてくる。
 
背中一面びっしり掘られたタトゥーで、人間そのものが美術品になり、売買されるという設定だけでも興味をそそるが、このエピソードは実話をモチーフにしたものというから驚き。
難民は簡単に国境を越えられないが、美術品であれば各国を自由に行き出来るというのも皮肉が効いていて面白い。アビールがサムに通訳しながら意思を伝える場面は、女性監督ならでは。

ラストの着地方法は全くの想定外で、思わず笑ってしまったが、いい締め括り方だったと思う。
それにしても、サムは美術品としてはなかなかいい金額で落札されたけど、人の価値という観点から考えると、安すぎるのではと思ってしまった。
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