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皮膚を売った男のwakiのレビュー・感想・評価

皮膚を売った男(2020年製作の映画)
4.0
シリアの難民問題を扱いながら、アート業界の閉鎖的でエリート主義的構造にも切り込んだ挑戦的な作品でした。
サムは商品(作品)となることで不自由ない暮らしを手に入れるけれど、結局彼は作品として身体を拘束され、人権をじわじわと剥奪されてしまう。
だが、それは逆にそうまでしなければ恋人に会うことすら叶わない難民の生きづらさを表していた。
中盤、明らかにマグリットの『不許複製』を意識した構図があったけど、それがラストの展開に効いてて「そうくるか……!」となった。全体的に鏡が意図的に使われていたから、他者から見た自己とかアイデンティティの不確かさを裏テーマにしているのかなと思ったりした。

<追記>
見終わったあとに監督のインタビュー記事を読んだら、「アイデンティティは多様で、ひとつのアイデンティティに固執するのは閉鎖的。本来のアイデンティティとは道のようなもので、どこから始まったのかもわからない。」と話していた。
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