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皮膚を売った男のKUBOのレビュー・感想・評価

皮膚を売った男(2020年製作の映画)
3.7
背中に芸術作品を描かれたことで、自由に渡航できるようになった難民の話っていう予告編を見て、がぜん興味を持った作品。

列車の中で恋人にプロポーズしたサム・アリは、それを受け入れてもらったことで調子に乗って「これは革命だ。自由がほしい!」なーんて叫んだことから反逆罪で逮捕される。

シリアから脱出したサムは、潜り込んだパーティである有名な画家と出会う。

「ジェフリーは賛否両論。すごい芸術家よ。
世界で有数の物議を醸す芸術家で、オークションで最も高値がつきます。」

「人生は無意味だ。我々はなんの価値もない。だが皆、人生に意味を持たせたがる。私は意味を売る。」

「キリストは水をワインに変えた。ジェフリーは無価値な物体を数百万ドルの作品に変えます。」

かくして、無価値なシリア難民は数百万ドルの芸術作品になる。

契約は「販売額と転売額の三分の一を君に支払う」というもの。

「シリア人は外交上好ましくない人物とされる。私はサムをキャンバスにして渡航を可能にする。商品の流通は人間の行き来よりもずっと自由だからだ。彼を「商品」に変えるわけだ。現代の法によると、こうすることで彼は人間性と自由を取り戻せる。すごく逆説的だろ?」

サムは「芸術作品」として一日中美術館に座り続けることで、一流ホテルに滞在し、夜中にルームサービスでキャビアを頼んで酒を飲める生活を手にする。

だが、彼の元を訪れる「シリア難民を守る会」のメンバーは「あなたは見せ物にされている。シリア難民への冒涜です。」とジェフリーへの怒りを表明する。

おそろしい話だが、

「インドでは赤ん坊が40ユーロ(約5600円!」「タイでは代理母が1200ユーロ」なのだそうだ。

かくしてサムも競売にかけられるのだが…

興味深い題材なのだが、中盤までシリアで離れ離れになった恋人との悲恋ばかりを引っ張るので少々興醒めしたが、後半は人種的偏見や社会問題の方にシフトして見応えがある。

特にトリッキーなラストはおもしろい!

楽しみながらいろいろ考えさせられる作品です。
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