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兎たちの暴走のlpのレビュー・感想・評価

兎たちの暴走(2020年製作の映画)
4.0
東京国際映画祭にて鑑賞。

TOKYOプレミア2020より中国の新人監督による作品『兎たちの暴走』。
実は当初「普通の行き別れた親子のドラマ」かと思ってノーマークだったのだけれども、予告を観たらサスペンスの要素も何故かありそうだ・・・ということで、気になって鑑賞することに。
結果、観ておいて良かったと思える面白い作品でした。

父親と継母と暮らす女子高生が主人公。彼女はどうにも継母との折り合いが悪く、フラストレーションを溜め込んでいる。そんなある日、幼い時に自分を捨てた実の母親が帰ってきて・・・というのがあらすじ。冒頭の時点で何やら誘拐事件が起きることはハッキリと明示されており、その事件が発生するまでの顛末を遡って描くのが今作の構成だ。

ストーリーにおいて特徴的なのは、主人公の友人2名も家庭環境に悩みを抱えており、その友人達をも巻き込み話を盛り上げていく点に感じた。
最も身近な存在である「家族」の関係に悩むことが強烈なストレスとなり、タイトルにある「暴走」へと繋がっていく。主人公だけが抱える問題にするのではなく、主人公の友人達にも家族の問題を背負わせることにより、作品の主題がより明確に伝わってきた。巧い。

惜しむらくは、主人公の実の母親も事情(問題)を抱えているのだけれども、その内容が凡庸に感じられたことだ。ドラマの核となる部分の1つではあったので、そこが弱いとドラマ全体でも「普通」という印象がどうしても強くなってしまう。逆にここでも一捻りあれば、映画祭期間中のベスト候補には充分なりえたはず。実に惜しい。

新人監督の作品とは思えない完成度の作品でした。今作のシェン・ユー監督には今後も注目したいと思います。
機会があればぜひ。オススメ。
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