タケオ

バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティのタケオのレビュー・感想・評価

3.5
-ジョン・カーペンターへの「愛」が溢れすぎた珍作『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』(21年)-

 随所で看過し難いほどのガサツさが目立つ、お世辞にも良くできているとはいえないヘッポコな作品である。しかし、どうしても本作のことを嫌いになれないのは、監督ヨハネス・ロバーツの「俺はジョン・カーペンターが大好きなんだ !!」というボンクラ極まりない(本当にどうしようもない)叫びに胸を打たれてしまったからだろう。だって筆者もジョン・カーペンターが大好きだからだ。
 まずオープニングでいきなり驚かされる。なんとクレジットのフォントが、ジョン・カーペンター監督作『パラダイム』(87年)と全く同じ仕様になっているのだ。「あ、この映画どうかしているぞ」と身構えさせられるが、オープニングのフォントなんてまだまだ序の口。一応ゲーム版『バイオハザード』シリーズの大ファンなら思わずニヤニヤしてしまうような小ネタも大量に仕込まれてはいる。しかし、正直そんなことなんてどうでもよくなるぐらいに、全編にカーペンター汁が迸りまくっているのである。『要塞警察』(76年)『ハロウィン』(78年)『ザ・フォッグ』(80年)の影響はいわずもがな、それにくわえてヨハネス・ロバーツのジョン・カーペンターへの「愛」は、なんとキャラクターの造形にまで及んでいる。本作に登場するレオン(アヴァン・ジョーギア)の間抜けっぷりなんて、明らかに『ゴースト・ハンターズ』(86年)の主人公ジャック・バートン(カート・ラッセル)を意識したものだ。すでにイメージが確立されているキャラクターの造形を下手にいじると、ファンからはこれでもかと非難される。そんなことは制作側だって承知の上だったはずだ。しかし、そうとわかっていながらもヨハネス・ロバーツは、自らのジョン・カーペンターへの「愛」を最後まで貫き通したのだ。もう本当にバカだとしかいいようがないのだが、だからこそ筆者は本作のことを嫌いになれない。駄目押しといわんばかりに『遊星からの物体X』(82年)を思わせるエンドロールなんて見せられた日には、もう「一緒に飲みに行きませんか?」としか言えないのである。
 しかしその一方で、そんな溢れんばかりのジョン・カーペンターへの「愛」も表層的なところばかりに留まってしまい、その精神性にまで踏み込めていないのはいかにも勿体ない。ジョン・カーペンターのトレードマークでもある「反権力」というテーマは、巨大企業アンブレラ社の陰謀を描いた『バイオハザード』シリーズとは相性も悪くないと思うのだが・・・。
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