レインウォッチャー

映画大好きポンポさんのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)
4.0
「幸福は創造の敵だ」
この言葉に頷ける人間であれば、この映画はまたとない贈り物になる。かくいうわたくしも「リア充のくせにアニメ観てんじゃねえ」「イケメンのくせにバンドやってんじゃねえ」などという心のアウシュビッツをじめじめと育んできた人間ですので、例に漏れず燃えたぎり震える涙をこぼしたのでした。この推進力は、どこかエヴァ破にも似た、月曜日の朝に立ち向かう糧になるパワー。

映画制作、といういわゆる「お仕事系?」な題材でありながら、そのリアリティとアニメながらのファンタジーの混ぜ具合、行き来のし具合が本当に素晴らしい。設定や状況の語り口もめくるめくアイデアの波状攻撃でテンポがメチャクチャによく、よいどころかそれ自体がエンターテイメントアンドアミューズメントになっていて、もう今後すべての映画作品はこれを教科書にしたらいいんじゃないのかと思えるほど。アニメの映像表現のイノベーションってこれまでたくさん感動させられてきたけれど、これはまたひとつエピックなものができてしまったのじゃないだろうか。全アニメファン、いや映像作品ファン必見です。

ここまででもう満点の勢いだったのがなぜ星4なのか。それはやはりどうしてもストーリーの帰着についてで、あまりにも「うまくいきすぎる」。いかに彼が冒頭に書いた「捨ててきた人間」であることを強調しても、いやじゅうぶん幸せじゃないか?という乖離が芽生えて、後半になるにつれ少しずつ大きくなっていってしまった。要するに、序盤でシンクロしすぎたぶん置いてけぼりにされたようで寂しかった。もちろんそれは作中でもメタ的に強調される90分という黄金の尺のために描ききれなかった部分もあるのだろうし、そして何より自分の度量の問題のような気もした。まだ、この顛末を一緒に喜べるほど自分は何も成し遂げたものがないんだなと…
もうすこし成長できたら、また会おう。待ってておくれ。