マンボー

映画大好きポンポさんのマンボーのレビュー・感想・評価

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)
3.8
いかにも最近の漫画やアニメっぽい絵柄が苦手でノーマークだったものの、やけに評価が高く、当時、他に観たい作品もあまりなかったので鑑賞。

想像していたよりもずっと面白かったし、特に前半から中盤にかけて、ぐいぐい目くるめく展開する物語に引っ張られながら、傑作を観ている予感がよぎり、身体中の細胞が沸き立ちかけたものの、終盤の三分の一、新人監督の初作品の編集作業のシーン以降、一気にテンポが落ちて転調し、当初はそれがラストの爆発のための助走かと思いきや、物語がただただ軽やかさや華やかさを失って失速し、普通の作品に堕した印象が残念だった。

まぁ、美女の水着だらけのお色気モノや、ゾンビモノやパニックモノ等、色モンに特化したわちゃわちゃしたB級映画を制作しまくりながら、泣かせ映画で感動させるより、おバカ映画で感動させる方がかっこいいとうそぶく、自信家で果断、見た目は子どもでありながら、映画製作において必要とされるあらゆる要素を奇跡的に兼備し、目くばりの行き届いたポンポさんのキャラクター、ネクラな映画マニアだが、研究熱心でそのセンスを磨き続け、密かに実力を積み上げつつあるジニー君、少し地味で不器用、体力勝負で男性向けのバイトも体当たりでこなす純粋な頑張り屋で伸びシロしかない女優志望のナタリー嬢他、ベタながらデフォルメの効いた登場人物たちのキャラクターの化学反応の愉しさと、かなり周到で脇道に逸れないストーリーテリングという本来は矛盾していてせめぎ合う二つの要素を、序盤からの三分の二までは、実に巧く両立させた一種独特の作風だった。

また終盤の、編集作業の泥沼からの悪循環は、本来描かれてもよく、実は描かれるべきなのかもしれないけれど、あまりにも普通に予測できうる展開でゆるゆると描かれているので、本作独特の物語の個性や魅力はしぼんだ印象だったが、創作を志す若い人には、案外現実の生々しい苦みを見せることに意味があるかもしれないとも思う。

ポンポさん書き下ろしの脚本の痛いほどのベタさ、さほど説得力のない甘々な栄光に浴するラストなども気になるけれど、特にラストは良い代案もすぐには浮かばないから、非難まではしがたい。

とにもかくにも、映画業界のなかなか想像だけでは埋めがたい裏側を垣間見られた気にさせられ、さらに至るところで映画好きなら必ずニヤリとさせられる言辞や場面が散りばめられていて、それでいて分かりやすい演出とスピード感とで中盤までは愉しめたが、全体を通して見ると、正直、物足りなさもあった。ただそれでも、小学校五年生と三年生の姪っ子二人には、大いに刺激を与えそうで、ぜひ観せたいと思える作品。「若おかみは小学生」よりも、媚びがないぶん、かなり好きな作品だった。