おぺちょぺ

映画大好きポンポさんのおぺちょぺのレビュー・感想・評価

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)
1.0
純粋に聞きたいんだけど、映画好きの皆さんは本当にこの作品を素晴らしいものとして享受しているんですか?
私は「映画大好き」って看板を金輪際掲げてほしくないほどに苦痛で、怒りが込み上げてきた。観客ナメてんのか。

前提として、私がアニメ作品の鑑賞から相当離れてしまっていることが一つの要因だとは思う。ウジウジ系主人公やロリキャラによる「え、ええーっ!?」「ううう〜(泣)困りますう(泣)」的な感情表現に苛立ちを覚えてしまう。これはアニメ文脈をしばらく読み込まず、短絡的ではない豊かな感情表現を行う実写映画を観てきたことによるアレルギー反応なんだと思う。好みの問題だから、これはもうしょうがないから許して。

ここを抜きにしても、許せない部分が多々ある。
まず、「ニャリウッド」という、架空とはいえハリウッドを舞台としておきながら、昨今のMeToo運動の流れを完全に無視した性的搾取表現。ベテラン俳優が若い女優に連絡先を聞き、「SNSやってないんです〜」とニコニコしながら断るというギャグが複数回あるんだけど、これ必要か?吐き気がするようなハラスメントのコンビネーションを、女性が笑いながら流すしかないという状況を、笑える場面としてこの時代に提示することが理解できない。

ポンポさんは「プロデューサー」という役職とされているが、その役割があまりにもフワッとしている。彼女を「神」として話をシンプルにしたいのはわかるけど、話の構想を練り、脚本も書いて、お金集めもして......。「監督」がただのパシリになってる。主人公は駆け出しだからわかるとして、それ以外に登場する監督も自分の企画を出すことはなく、ポンポさんがゼロから作り上げた作品の、「撮影現場を統括するだけの存在」として描かれている。ハリウッドのシステムとして分業という側面もあるかもしれないけど、「圧倒的天才プロデューサーがほとんどすべてやっちゃう」みたいな展開はあまりにも浅すぎる。

で、その「映画大好き」と自称する天才プロデューサーが種々の偏見を大きな声でわめく。
・いわゆるB級モンスター映画は価値は低いが、そこにちょっとした感動ポイントを入れることで観客はそのギャップにやられる。
・結局は人間ドラマこそが至高で、人々を感動させられる。
・陰キャしかエンタメ界で成功できない
「幼少時から映画たくさん観てきたからわかる」なんて態度でこうした発言をするんだけど、その態度のどこが「映画大好き」なんだよ。
編集とか構成について偉そうに語っておきながら、まったく映像作品の良さを生かしてないのも笑ってしまう(笑えない)。状況や感情をすべて説明ゼリフで語る登場人物、短絡的かつステレオタイプな感情表現(アニメという表現上仕方ない部分もある)、不必要かつ不愉快なお色気要素・・・。こっちのテンションは全く上がってないのに、何度も繰り返される音楽爆上げからの〜「いっけー!」みたいな展開も顔が真っ赤になってしまった。
主人公の好きな映画が、ニューシネマパラダイスとタクシードライバーっていうのも、はっきりいって薄っぺらすぎる。

オタクの方々がこの程度で満足するだろうとナメられてるのは可哀想で仕方がない。実際に絶賛されてるから、もう本当に哀れなんだけど。