映画プロデューサー・ポンポさんのもとで映画を学ぶ気弱なAD・ジーンは、15秒の映画CMの編集で評価されたことをきっかけにして新作映画の監督を任されることになり、右も左も分からないながらも映画への情熱という名の狂気をもって身を焦がしていく、映画狂が映画好きに贈る、また映画が観たくなるようなパワフルなアニメです。
もうとにもかくにも、作品全体から常に発され続けるエンタメのエネルギーの奔流がすさまじくて、ノンストップで疾走していくので90分があっという間でした。作中作であるヒューマンドラマの撮影やその編集作業、そして制作裏方の運営仕事などという、一見すると地味になりかねない場面を、アニメならではの無茶苦茶な演出の嵐とそのポップな作風と強烈なメッセージでテンポよく駆け抜けてぶん殴ってくるのが気持ちよくて、心が前傾姿勢でのめり込んでいた…
プロデューサーのポンポさんは、外見や言動だけだと「無鉄砲で破天荒なトラブルメイカー」っぽいんですけど、その実態は地に足の着いためちゃくちゃ頼りになる漢前で、この子が後ろに控えてくれるだけで全部何とかなるのではないか？みたいな圧倒的な安心感があります。そして、主人公のジーンくん、気弱で夢を追うクリエイターの卵という共感型キャラクターに見せかけて…こいつはものすごい、絶対に常人では辿り着けない狂人であるのが最高です。そりゃもう「映画を撮るか死ぬしかないんだ」って言ってるくらいだから”そう”なんですよね。結局目の下にえぐいクマがあるようなキャラはみんなロクでなしなんですよ（暴言）
それ以外のキャラクターもみんなポジティブかつポップに描かれていて、この作品では物語についてまわる「ストーリーの本筋にはあまり関係のないストレス」が丁寧に、意図的に切り落としてあるな、って思いました。これに限らないのですが、はじけるような作風に反して色々なところが丁寧に作られている気がします。そういうストレスが少ないので、ストーリーとキャラに集中できるんですよね。好き…
あと、ポンポさんを観た人はみんな口を揃えてこう言うと思います。
「この作品で一番好きなのは、90分であることだ」って…
「迫力」とは全く違った意味で、映画館で観られて良かったー！ってなる、そんな作品です。
