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映画大好きポンポさんのbeachboss114のレビュー・感想・評価

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)
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私、ダメだわ、これ。つーか、正直、嫌い。何かと鼻につく作品でしたわ。

才能や感動やモノの良し悪しをいちいちセリフで説明する説教臭さ、稚拙さ、ダサさ。

中学生が夢見た人生設計みたいに簡単に事が運ぶ安っぽくて薄っぺらいストーリー。尺を短くするために「葛藤」を避けて「ご都合主義」にしたのだとしたら、本末転倒以外の何物でもない。短けりゃ良いってもんじゃないんだよ。時間には「クロノス時間」と「カイロス時間」ってのがありましてな。面白ければ長くてもあっという間だし、つまらなければ90分でも寝落ちするんだよ。

「泣かせ映画で感動させるより、おバカ映画で感動させる方がカッコいい」という考え方には同感だが、そこは「カッコ」じゃなくて「粋」なんですよ、「技」なんですよ、「センス」なんですよ。「カッコ」なんて言ってる時点でカッコ悪い。

ポンポさんの人生哲学も、自分に酔ってるだけでこっ恥ずかしい。「幸福は想像の敵(創造?)」「社会と切り離された精神世界の広さと深さこそがクリエイターとしての潜在能力の大きさ」などなど。分かるけど、ヌルいわ。ヌルすぎる。生ぬるいったらありゃしない。地獄を見たことない人間が地獄の底を語るな。「満たされた人間はモノの考え方が浅くなる」って、己が巨匠の爺ちゃんの縁故で映画業界にいる身の上で言えた口か(笑)。

映画の尺は短い方がいい理由が「2時間以上の集中力を観客に求めるのは現代の娯楽として優しくない」だの「簡潔に伝えたいメッセージを表現すべき」だの、オッサン連中が居酒屋で若いネーチャン相手に悦に入る程度の「その場限りの説得力」しかない。

そんな戯れ言を得意顔でほざいてるヤツがクソ長い脚本書いてる時点で矛盾してるし。エラソーに哲学語ってる割には、劇中映画が果てしなくつまらなさそう。

ポンポさんの映画哲学自体が、過去の映画作家のインタビューや研究本からのコピペに過ぎず、上から目線でカッコつけてる割にはプロデューサーとしての凄さやスキルが全っ然伝わってこない。つーか、ない。

要するに、すべてにおいて中2病の域を出ないから、見ていてこっ恥ずかしいのよ。

編集で切って切って切りまくるクライマックスは盛り上がったし、「たった一つ残ったものを手放さないために切る」という考え方には大いに共感して一瞬アツいものを感じかけたが、「編集=切るだけ」という短絡的な思考にすぎないと気づいて一気に冷めた。

「編集」ってのは単に短くするだけの作業じゃなくて、繋ぎ合わせの妙で体感時間を錯覚させ、メッセージや情報を印象的に伝え、感動へと導くテクニック。短くすればいいだけなら、余計なものを撮ってる時点で単に段取りが悪いだけの使えないウスノロなんだよ。そもそもテメーの書いた脚本が長いからそんなことになったんだろうが。

さらに、ラストにウケ狙いで入れた「気の利いた(と作り手たちが勝手に思っている)一言」のせいで、結局、「映画は尺がすべて」「短かけりゃそれでいい」という偏った価値観を印象づけてしまったわけで。

そんなこんなで、大切なものを手放さないためにも、こんな映画は切り捨てるに限る。
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