しちれゆ

トゥルーノースのしちれゆのレビュー・感想・評価

トゥルーノース(2020年製作の映画)
4.3
監督が10年もの歳月をかけて脱北者に取材して作りあげたという北朝鮮の強制収容所の話(3Dアニメ)ですが物語としても起承転結がはっきりしていてとても面白い(語弊があったらすみません)。監督 清水ハン栄治は在日コリアン4世だそう。

パク一家は在日朝鮮人の帰還事業によって北朝鮮に帰り当局に目をつけられて強制収容所に入れられた。だから父親は日本製の腕時計を持っていて子供たちは『赤とんぼ』を歌う。パク家の長男ヨハンは最初は素直で優しい少年だったが収容所で生き延びるために監視員側に出世する。これはナチスに於ける″カポー″と同じ。北朝鮮にもこういう立場の人間が居たのか、と驚いた。ヨハンは母の死に際の「いつも美しいものを探してね」という言葉によって自分を悔い、友人インスと脱北を企てる。ヨハンの妹ミヒをレイプした体制側のリー中尉の良心、ヨハンがミヒとインスを守るために下した決断、父との再会、最後に描かれるミヒとミヒの子ども。アニメながら見応え充分。
作中には側近を引き連れた体制側のデブの男の子が出てきてヨハンたちを「日本の豚」と虐めるのだが、この男子は金正恩?

「国家って何だ、人民って何だ」
「ここで起きていることを世界に伝えろ」
″地上の楽園″を夢見て祖国に帰った人々だけでなく、世界を知ることなく暴君の支配下で生きる後の世代の人々もまた本当に悲しい。
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