ギズモX

トゥルーノースのギズモXのレビュー・感想・評価

トゥルーノース(2020年製作の映画)
4.4
在日コリアン4世の清水ハン栄治監督が制作した、北朝鮮の政治犯収容所の内部を描くCGアニメーション映画。
若くして強制収容所に送られた一家の半生を辿る衝撃作。

僕が北朝鮮のことを始めて知ったのは小学生低学年だった頃。
2002年に起きた中国にある日本の領事館に北朝鮮の亡命者が駆け込んだ事件をニュースで聞いた時だった。

今でもしばしば北朝鮮のニュースを耳にするが、その北朝鮮の内部の状況はあまり認知されていない。
この映画は、そんなニュースでは分からなかった北朝鮮の暗部を一般人の視点からフォーカスしており、彼らの置かれている状況を深く理解できるようになっています。

僕が一番目にとまったのは、北朝鮮のその非人道的体制よりもそこで生きている者達の姿だ。
過酷な環境下で洗脳されて人形のように生活しているのではなく、"抑圧されながらも何とかして必死に生き延びようとする人々の意思"がそこにある。

「もし捕まったら抵抗するな」
「持ち物を全て差し出せ」
「賄賂だけがこの国で物事を成し遂げる唯一の方法だ」

特に物語中盤でのお爺さんの話が衝撃的だった。

「国は貧しかった。
 でも幸せだった。
 みんなで協力したんだ。
 誇れる祖国を建設しようと。
 あの頃は最高指導者ではなく、
 人民の絆が何より尊かった」

彼らは本気で人民のための社会主義国家を築き上げようとした。
今でもそうなのかもしれない。
でも、どこかで大きく間違えた。
なんかそう考えると、これは遠い遠い異世界の話ではなく、凄く身近なことであるように思える。

実は、これはあまり詳しいことは言えないんだけれど、
僕が尊敬している牧師先生の息子さんが北朝鮮を含めたアジア情勢に凄く詳しい大手の新聞記者の方なんですね。
その牧師先生の教会には何度かお邪魔したことに加えて、その新聞記者の記事も以前に何度も読んでいたから、それを知った時は頭に電流が走るくらい衝撃を受けてしまって、後になって自分は今まで何を見ていたんだろうなと凄く考えさせられたことがある。
その人とは実際に会ったことはないけれど、今でも新聞とかは読むようにしている。

自分はどうあるべきなのか、何を知るべきなのか、できることはなにかを問われているように感じた作品だ。

「"誰が正しい"とか"誰が間違っているか"が重要じゃないの」
「"誰になりたいか" 自分に問いなさい」

その他にも『プライベートライアン』『ショーシャンクの空に』『カイジ』などの他作品のオマージュも多く含まれているなと思いました。


下のリンクは北朝鮮問題に詳しいジャーナリスト、石丸次郎氏の記事。
この映画や日本と北朝鮮の繋がりがより理解できると思います。

https://www.asiapress.org/apn/2021/09/north-korea/true-north/
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