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家庭裁判所 第3H法廷のlily0x0のレビュー・感想・評価

家庭裁判所 第3H法廷(2020年製作の映画)
3.6
#TIFF2020 11本目鑑賞作品
ラストはこちらでした

フロリダの家庭裁判所で、児童虐待を疑われる親の親権をどうするかなどが話し合われるリアルな法廷を追ったドキュメンタリー映画

仕事柄児童虐待ケースに触れることもあり、彼らを取り巻く専門職としては観ておくべき作品だと思い鑑賞

日本の裁判だってそう傍聴することもないので、実際の法廷をたっぷり見せられる映像はとても貴重だと思いました


今作、仮眠してから臨んで正解!!
背景など詳細が語られることはなく、次から次へと、多くのケースの裁判を見せられます
深い説明がなくても、それぞれの家庭に複雑な事情や過去があることなどを察することができます
頭フル回転で集中しないとついていけず、疲れてしまったり眠くなったりした人もいたかもしれないなぁ😅という印象です

この作品では、子どもと親という当事者だけに焦点を当てたものではなく、裁判官や弁護人、児童保護局、里親など、周囲の専門職にもフォーカスしていて、彼らが仕事以上に、家族、子どもと関わり、全力でサポートしていることがとてもよくわかり、それがとてもよかったです!!!



以下少しネタバレ含みます


その中で、冷たくも優しくもある、揺るがない法律というものを実感させられたのは、特に「審理」のパートで描かれる、まるで違う2つのケース。

後で親だと発覚してベネズエラ(?)からはるばるやってきた男性は、正直こちらからしたら今さら出てきてなんなの?という感じだし、本当に親権欲しくて子供に愛情があったらもっと何かしらアプローチしてるはずでしょ?と思わざるを得ないです。

結果、後で発覚してわざわざ法廷きた時点で、熱意もあると捉えられたし、親権は与えられてました。

最後の話は女性弁護士の姿が印象的でした。
彼女が訴えるように、お母さんから子供への愛情があるのは、確実で、我が子のためにたくさん努力もしているけれど、やっぱり今までのことから考えると子供の成長において彼女が育てることはよくないと考えられてしまっての親権終了。


子供への愛情がありそうなのか、なさそうなのかではなく、あくまで子供にとって成長のために良い環境が提供できそうなのかということが大切なんだなと思わされました。
愛情とかそんなものは他人が感情で推し量れるものではないし、だから法というものがあるのであって。

ただ、ランダムにいろんなケースを並べて流しているわけではなくて、監督が意図的に伝えたいことがあってこのケースを選んだんだなって伝わってきました。

児童保護局の女性は、立場上どうしても親権終了に導くかたちになるけれどど、親の今までの行いから、本当にこの親に託して大丈夫なのか??と、子供を守るために必死でしたし、

里親は、仕事だとは言い切れない仕事だなと思い、凄すぎると思いました…
いつ去ってしまうかもわからない状況で自己やプライベートを犠牲にしてまで子供に愛情を与えるなんて。本当にすごい。

裁判官からの彼女たちに対する言葉もよかったし、親権終了を認めた親に対しての言葉かけもとてもよかったです。
また、裁判官は常に言葉を選んで、感情論でない中立の立場から意見を述べていてプロフェッショナルだなと感じさせられました。

周りの職種が親と子のためにそれぞれの仕事を全うしている姿がわかり、とてもよかったです。
普段見られないような貴重なものを見させていただきました。
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