はい

スウィート・シングのはいのレビュー・感想・評価

スウィート・シング(2020年製作の映画)
4.0
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※作中に虐待描写があります。
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「スウィート・シング」
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家を出ていった母。アル中の父。
既に機能不全に陥ってしまっている家庭だ。

弟と父のご飯を作り、弟と父のクリスマスプレゼントを用意する姉の姿。
かつて在った家庭の面影までは見失うまいと、必死に家族の中心をこなす彼女の傍には、その背中を支える弟がいる。

初っ端から涙が出そうだった。
しかし画面からは悲惨な現状に対して手を取り合う2人の多幸感に溢れている。

中盤以降の、不吉な予感と希望が並走しながら繰り広げられる逃避行劇は、その影を忘れてしまうほど輝かしい。かつて子供だった大人の生までも肯定してくれる。中には、その肯定がやがて内省へと繋がる人もいるかもしれない。
できることなら、映画のその一部分を切り取って永遠と走らせたい。

しかしそれも束の間。
子供だけの物語は、再び親元へと帰着していく。

2人はまだ子供だから。幸か不幸か、この映画は子供を親(もしくは大人)と切り離すことをしない。
思えば、彼女らの救いとなっていた「音楽」についても、父親から託されたもの(ウクレレも彼女自身の名前も)であった。

この最後は明るいものか、どうか。

それはアル中療養から帰還した父の存在にかかっている。
「大丈夫、髪はまた伸びるから」
と言わせた父。
私はまだ「嫌がる娘の髪を無理やり断髪する」という虐待・傷害行為をした父を許していない。
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その後、あの家族はどうなったのだろう。
観た人が映画のその後を案じる。そうさせる物語はどれも美しい。その点においてもとても耽美的な映画だった。
はい

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