MasaichiYaguchi

湖底の空のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

湖底の空(2019年製作の映画)
3.4
この日中韓合作映画では、日本人の父と韓国人の母の間に生まれ、韓国の安東で育った一卵性双生児の空と海が抱える秘密が、成人してイラストレーターを目指す空と出版社に勤める日本人男性・望月との恋愛を絡めてサスペンスタッチで解き明かされていく。
空が成人してからの物語は主に上海を舞台に展開するのだが、日中韓合作ということもあって、日本語、中国語、韓国語が飛び交っていて、ボーダーレスな印象を受けるが、人種、性別、年齢、信仰などに拘らずに多様な人材を生かし、最大限の能力を発揮させるダイバーシティが重視されているが、そういった点からも本作はその潮流に則した映画だと言えると思う。
この映画では、コントラストを成す二つのものが幾つか登場していて、先ず空と海、男と女、陰と陽、黒と白、上海と安東など、これらのものが相照らすことで隠れていた真実が浮き上がってくる。
対象的な空と海を主演のイ・テギョンが一人二役で演じているが、その関係性にあるものが空を精神的に不安定にさせ、エキセントリックな面が現れてくる。
そして過去を引き摺っているのは空だけでなく望月の子ども時代のエピソードも作品に影を落とす。
この心に傷を持つ男女は、互いの痛みや切なさに共鳴するかのように惹かれ合うのだが、果たしてその恋の結末は?
痛みや切なさの先に彼らが見出だそうとするものが余韻を残します。