こたつむり

アムステルダムのこたつむりのレビュー・感想・評価

アムステルダム(2022年製作の映画)
2.9
♪ Brother 生きていくだけだよ
  ためらうことなど何もないよ 今更

雰囲気映画としては最良ですネ。
出演陣も豪華絢爛。クリスチャン・ベール、マーゴット・ロビー、ラミ・マレック、クリス・ロック、マイケル・シャノン、アニヤ・テイラー=ジョイ、ロバート・デ・ニーロ…錚々たる面々です。

ポップさ極まる音楽も上々ですネ。
しかも、メジャーコードに少しだけ哀愁が混じっているんです。浮き立つと同時に“切なさ”を感じるので、何とも言えない気分になるんです。

そして、舞台は1930年代ですネ。
薬品の臭いが漂う病院とか、硝煙を纏ったような復員兵とか、コルク臭が抜けない酒が並ぶバーとか、当時の空気をビンビンと感じられる美術は最高。この時代設定だけでご飯が三杯食べられます。

でも、大切なのは脚本ですネ。
役者も美術も音楽も活かすためには、物語を明確に彫り出してあることが肝要なのです。

そして、それが大いに微妙ですネ。
コメディなのか、サスペンスなのか、時代劇なのか、友情溢れるバディ系なのか。諸要素を刈り込まずに生えるがままの庭園状態。美味しいところが見えてこないのです。

だから、公開初週に大失速も納得ですネ。
ウィキペディア先生によると、製作費8000万ドルに対して興行収入3100万ドル。一説によると損失は9700万ドルになるとか(計算が合わないのが謎ですが)。

いやぁ。ダダ滑りですネ。
雰囲気映画も悪くはありませんが、それで評価を上げるならば、もっと中身が“空っぽ”じゃないとダメなのでしょう。ある意味、誠実過ぎたのです。

それが顕著なのが尺ですネ。
真摯な姿勢で描かれた134分は、雰囲気だけを味わうには長すぎるんです。せめて、あと15分削っていれば…きっと違った形になったと思います。

まあ、そんなわけでネ。
医者と弁護士と看護師の奇妙な友情譚。
事実を基にしているとか、犯人かを捜すとか、愛の行先を模索するとか…そんな小枝を気にしたらダメです。特にタイトルはガン無視が大切。『アムステルダム』って結局何よ、ってツッコんだら負けです。

でも、考えちゃうんですけど…ネ。
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