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着信アリFinalの消費者のネタバレレビュー・内容・結末

着信アリFinal(2006年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

・あらすじ
とある高校の女子生徒、えみりとそのクラスメイト達は修学旅行で韓国を訪れる
えみりは手話交流会で知り合った耳の聞こえない男友達、ジヌがいる国である事もあり楽しみにしていた
しかし韓国に到着すると“死の予告電話”による生徒の死が相次いでいく
その黒幕はクラスで凄惨なイジメを受けていた少女、明日香だった
明日香はパムという名のイマジナリーフレンドと共にケータイを使って電話とメールを送り続けていたのだ
明日香への電話から彼女の事件への関与に気付いたえみりはジヌと共に呪いの連鎖を止めるべく懸命な調査をしていく
その後も続く電話による死
果たしてえみり達は死の予告電話を止める事が出来るのか?
という心霊ホラー作品

・鑑賞理由
2作目まで鑑賞を終えて満を持して完結編を鑑賞

・感想
前作では美々子がそもそもの発端ではなく彼女もまたリー・リィという台湾の少女から呪いを受け継いだ存在だった、という事が明かされており今作では舞台が韓国に移っている
製作時が恐らく韓流ブームだった事からそうなったのかな、とは思うものの明日香がPCのディスプレイに映ったクラスの集合写真を眺めながら標的を選んで遠隔で死に至らしめている、という設定と後に明かされる首吊りをしたという女子生徒、パムは明日香と同一人物という真実と彼女の本当の体は未だ昏睡中という事もあってそこはまぁそんなに引っかからない

ただちょこちょこ矛盾点があったり、美々子の入り込んだ明日香のPCをフリーズさせて呪いを止める、という目的の為に美々子の呪いの事を扱うサイトの掲示板を使ってメールの一斉送信を要請した後の日韓の人々の協力の描写は「何か電車男みたいだな…」と感じてしまい恐怖性を大分薄めてしまっていた印象
せっかく前作まで積み上げて来たおどろおどろしさが台無しになってんなぁというのが個人的な感想

ちなみに矛盾点というのは韓国へと向かう途中で電話を既に受けた生徒達が転送しあって事が収まっていたという会話があったにも関わらず後に転送を受けた者は更に転送する事は出来ない、と判明した事
呪いを止めるべくえみりが明日香に電話した際に呪いを受けた者の姿しか見えてないはずの明日香がクラスメイトの真里が一緒にいると知っていた事など

他に気になったのはジヌが勤めるろうあ学校の少女、シウが特にストーリーに絡まなかった事
ヤンキーでいじめっ子の輝也が旭日旗のバックプリントがでかでかとされている服を着ながら問題なく韓国を歩けていた事
一連の事件がジヌの死と共に終わりを告げた後、特に負傷はしていなかったえみりが何故か車椅子に乗っていた事
などだろうか
まぁ輝也の服に関してはDQN設定をより分かりやすくする為、くらいの理由だったんだろうけどせっかくならアレで現地人と一悶着あったりしても良かった気がする

そういった展開や描写の粗が作品が全体的に雑さや安っぽさを感じさせる要因になっていた事は確かなんだけど原因はそれだけじゃない
もう一つの理由は恐怖演出があまりにも直接的過ぎた事
生首がやたら出て来たり、前作に続いて呪いを受けた人間が死後に「呪怨」の伽椰子の様に這い回ったり、という部分だ
他にも劇中で最初に死に様が描かれたあずさとその次に死んだ輝也までは死因をパムこと明日香の昏睡の原因と同様に首吊りだったのに早い段階で死因が変わってしまったのも勿体無く感じた

と、ここまでは全体的に愚痴の様になってしまったけど勿論良かった点もある
その内の一つは恐怖演出
さっき直接的になり過ぎていた、と書いたばっかりではあるけど映像として単体で観る分にはちゃんと不気味で怖かった
とはいえさほどメイクも施していない美々子の方が怖くはあったんだけど…w
後は標的となるのが高校のクラスメイト達、というのが転送を恐れてパニック状態になり友情が壊れていくという胸糞展開を生み出していたのも良かった
呪いよりも怖いのは人間社会だ、という明日香の悲痛な思いが上手く反映されていたと思う
この展開を生み出すのが前作までは無かった「転送スレバ死ナナイ」という新設定なので設定が追加されたのは正解だった

ちゃんとバッドエンドだったのも良かった
良かったんだけど気になる点もある
一斉メールでフリーズさせた末にPCは爆発して美々子も吹き飛んでいた
にも関わらず明日香への電話での「私で終わりにして」というえみりの発言を聞いたジヌが彼女の受けた着信を自らのケータイへと転送させて身代わりになって呪いが止まる、というエンディングなんだけどそうするなら別のPCなり何なりに消滅させられる前に移っていた描写があるべきだったんじゃ…という点
ちょくちょくえみりとジヌの話に出て来る耳の聞こえないヴァイオリニストがジヌ自身であり元カノの身代わりにならなかった事を悔いていたからその行動をとった、という展開の為なのは分かる
でもヴァイオリニストは手話交流会で2人とも目にしていたはずなのに何でジヌと同一人物って事になるんだ?という…
自分の事だと思わせない為にジヌが他の人物の話として語っていた、という事なのかもしれないけどそうなると“一番大切な聴力を失う事で自分を罰し続けている”という言葉が嘘になってそこの悲劇性が無くなっちゃうんだよね…
えみりと出会う前にジヌがヴァイオリンを弾いていた事を示す場面があっただけでもそこは違ったんじゃないかなぁ…

と結局また愚痴になっちゃってるけどこれまでの誰かに強い憎しみを持った過去がある人間が美々子に共鳴してしまう、という設定が今までの2人である由美と野添の虐待被害者という背景から打って変わってイジメという社会派性のある題材になっていたのとかは良い事だとは思った
これまでとは違う復讐の要素が入って来る事で呪いを使って大量殺人に走っていく「デスノート」的な展開に繋げられていた事でまた違った魅力を生み出していたし
だからこそもっと緻密に描いて欲しかった、とは思っちゃうけど…

・総括
前作までが良かっただけに完結編で尻すぼみしてしまったのは残念だけど美々子と共鳴して復讐に燃える明日香を演じた堀北真希の芝居が良かったり恐怖演出は単体で見れば怖かったり、という良かった点もあったからまぁ言うほど悪くはなかったんじゃないかなと思う
何より「リング」や「呪怨」と違っていつまでもダラダラと続編として駄作を連発する事なく3本で完結させたのは英断だったと思うし
でもまぁせっかく3作目撮るんだったらリー・リィの存在を無かった事にはして欲しくなかったかな…
美々子も彼女の被害者だった訳だしそこもちゃんとオチをつけてくれたらそれだけでももう少し評価は上げられたかも

あと130Rと東京ダイナマイトが出てたの何だったんすかね
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