ゆめちん

ある人質 生還までの398日のゆめちんのレビュー・感想・評価

ある人質 生還までの398日(2019年製作の映画)
4.0
ある人質 生還までの398日
  
実話をベースにした作品。
 
怪我で体操選手の夢を諦め、写真家に転身したデンマーク人のダニエル。彼はシリアの非戦闘地域を訪れ、戦禍を生きる人々の日常を撮影するが、情勢が一変しイスラム過激派組織ISに拉致されてしまう。
 
飢えや拷問に耐える主人公の監禁シーンと、身代金を要求された家族の奔走する姿が交互に描かれ、息詰まるシーンの連続に胸が苦しくなる。拉致監禁、交渉人の人質交渉、資金集め等、どれもリアリティがあり、まるでドキュメンタリーを観ているかのようだった。
 
特に "誘拐ビジネス" の実態と闇の深さを、事細かに描かれているのが興味深い。お金で買うしか救えない現実に憤りを覚え、単に "自己責任" では片付けることのできない "命の尊さ" を実感する。人命より大切な物などあるのだろうかと考えさせられる。
 
終盤の米国人記者ジェームズが、ダニエルに別れを告げるシーンが印象に残る。米国人である自分の運命を悟りながらも、常に前を向き明るさを絶やさないジェームズの "憎悪に負けるな、勝つには愛しかない" という言葉が重く響く。
 
観ているのが辛い作品ですが、1人でも多くの人に劇場に足を運んで観て頂きたい。
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