あーさん

書かれた顔のあーさんのレビュー・感想・評価

書かれた顔(1995年製作の映画)
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最終日に迷った末に北千住まで遠征、駆け込み鑑賞。こちらも、フォロワーさん情報に感謝。
少し毛色の違う作品を観ている方の情報は、本当に有難い!(薪さん、ありがとうございます🙇‍♀️)

観に行って良かった。。

板東玉三郎に惚れ込んだダニエル・シュミット監督(スイス人)が、'黄昏'をテーマに、色んな芸術家のパフォーマンス(武原はんの舞、杉村春子の語り・所作、大野一雄の舞踏、102歳の現役芸者蔦清小松朝じの三味線…)と劇中劇"黄昏芸者情話"と玉三郎という奇跡の謎をコラージュのように組み合わせ、撮った作品。
ドキュメンタリーではなく、あくまでもフィクションだという。
(撮影監督/レナード・ベルタ)

1995年の作品だから、27年前。
相変わらず美しくはんなりした話し方なのだが、昔流行った肩のいかったスーツをビシッと着た45歳の玉三郎さんは、当たり前だけれど今よりもずっと若くて、まだ男性の部分をより感じた。

女を演じるという事について語る玉三郎さん。
"男の演じる女は、女よりも女らしい"と言われるが、自分は概念としての女を演じているという。
そして、言葉よりも所作が大切だと。

印象的だったのは、女形のお化粧をする場面。
白粉を刷毛で塗っていく。目張りを入れ、眉を描く。紅をさす。
一つ一つの仕草に迷いがない。
首から胸元まで真っ白に塗って鬘を被ったら、もうそこには男ではなく、女の顔があった。"書かれた顔"

シュミット監督は、玉三郎の心の内まで見通している。本編ではなく、雑誌のインタビューで語られた以下の話が心に残った。
"偉大な芸術家は、すべて余人には窺い知れない謎を秘めている。…玉三郎もそう。…彼は大衆と結婚してしまった。…"
圧倒的なスターの地位と引き換えに、それ故の孤独に苛まれる。
何度も何度も精神を痛めて、それでも走り続けなければならなかった玉三郎さんの途轍もなく大きな苦悩。

胸に迫る思いがした。

美しさで人々を魅了させ続ける裏で、どれだけ大変な事を引き受けてきたのか。。
この方の人生を想う時、どんな人も襟を正したくなるだろう。
少なくとも私にとって、玉三郎さんはそういう存在である。

その事を改めて確認できた作品であった。

その他の芸術家の方々の神々しいお姿も、お一人お一人脳裏に焼き付いている。

やはり、一つの道を追求し続けた人の美しさには敵わない。


記録としても、素晴らしかったと思う。





MEMO
静止したような動き。
動きが静止であるような動き。
静止が動きであるような静止。

背の高さに悩む。

晴海埠頭。

鷺娘の引き抜き(早着替え)。
あーさん

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